モンゴル東部の大地。有刺鉄線を張った国境のフェンスが、数百メートル先に遠望できた。巡回している国境警備隊員によるものだろう、国境から付かず離れずの位置に車両やバイクの轍(わだち)が並走していた。フェンスの向こうには、中国側の背の高い監視塔が見えた。
2023年6月2日、岡崎久弥さん(61)が主宰する「日蒙共同学術調査団」に同行した記者(永井)は、中国との国境のすぐ近くまで足を延ばした。
立ち入り禁止の緩衝地帯のすぐ手前から観察すると、満州へ侵攻したソ連の第6親衛戦車軍が偵察用に掘ったとみられる壕(ごう)は、鎖のように連なり、国境線からわずか数十メートルにまで迫っているのが分かった。
【動画】国境線のすぐ近くまで偵察壕が掘られていた=日蒙共同調査団提供
肉眼で簡単に見えるような場所まで、なぜソ連軍は壕を掘ることができたのか。
敗戦時に関東軍参謀だった草地貞吾は戦後、そのあたりの事情をアメリカの歴史家に語っていた。
いまはアメリカ・南カリフォ…