台湾人観光客に熱視線 観光大使にインフルエンサー向け試験ツアーも

西本秀 岡田将平
[PR]

 来年1月に広島空港発着の台北便が再開されるのを前に、広島県内では台湾からのインバウンド訪日客)需要への期待が高まっている。自治体や観光業界は「アフターコロナ」も見据え、台湾人のインフルエンサーを通じて地域の魅力を発信し誘客を狙う。

 福山市は21、22の両日、同市の鞆の浦など瀬戸内海の観光の魅力をPRするため、インスタグラムなどSNSで情報を発信しているモデルや漫画家ら4人を台湾から招き、試験ツアーを行った。日本の情報を発信する台湾向けの観光サイトなどを運営している台湾人の編集者2人も同行した。

 招待客は21日午後、尾道港から鞆の浦に向かう遊覧船に乗船。潮風に吹かれ、瀬戸内海の風景を楽しんだ後、鞆の浦で伝統的まちなみが残る路地を散策した。夕方はクルーズ船に乗り、日没を鑑賞。翌22日は岡山県笠岡市沖の北木島を訪ねた。

 台湾人の観光客は繰り返し訪日する例が多く、すでに東京や京都などを訪れた人々は、地方へ足を伸ばす。参加したモデルの張哲偉さん(30)は「東京など都会と違って、落ち着いた雰囲気。海を眺めてリラックスできた」。

 宮崎駿監督のアニメが好きだという漫画家の柯宥希さん(40)は「台湾人にも『崖の上のポニョ』は知られている。モデルとなった鞆の浦に来たいと思う人は多いのでは」と言う。

 課題は言葉の壁だ。参加者のひとりは、「案内の多くが日本語だった。台湾で使う中国語の繁体字の旅行サイトやパンフレットがあるとうれしい」と望む。

 県観光連盟の統計によると、コロナ禍前の2019年に県を訪問した外国人観光客の数は米国が1位で約36万9千人、台湾人は2位で約26万4千人。備後地区を訪ねた観光客に限ると、台湾人が全体の3割を占める約13万7千人で1位となる。周囲に関西や四国、九州もあって競争は激しい。

 試験ツアーを企画した福山市経済総務課は、「日本をよく知る台湾の人々に興味を持ってもらえるよう、海のルートを巡るツアーを企画した。招待客の反応や情報発信の効果をみて、今後の台湾からの誘客につなげたい」と話す。参加者の感想や要望を新たな旅行商品の開発に生かすという。

 広島の魅力をPRしてもらうため、県観光連盟は台湾出身の林日日(リンリリ)さん(34)=東京都=と、娘で3歳の甜甜圈(テンテンチェン)さんを「ひろしま観光大使」に任命した。

 林さんは、自身がつくる「キャラ弁」が人気でSNSでのフォロワーは総計30万人を超える。出身は台湾・台中で、県内で数年間暮らした経験があるという。

 林さんは21日に広島市中区であった任命式で「ここに住んでいて、カープも好きだった。台湾の人に温かくて深い話をしたい」と語った。「ドーナツ」を意味するニックネームの甜甜圈さんも任命状を受け取った。

 県観光連盟の担当者は広島空港の台北便再開に期待を寄せ、「コロナ禍前にも増して、台湾から広島に来てもらえれば」と話す。西本秀、岡田将平)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません