不条理ギャグが笑えない コロナ期の漫画描く中川いさみ

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西本ゆか
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 深刻だけど、傍(はた)からみるとちょっと不思議。コロナ禍で始まったそんな「新しい日常」をつづる連載漫画「コロコロ毛玉日記」が、10月3日付の朝日新聞土曜別刷り「be」で始まります。作者は「クマのプー太郎」で人気を博した中川いさみさん(58)。得意としてきた不条理ギャグから距離を置き、「等身大」の笑いを描く、といいます。現実が空想の「斜め上」を行ってしまうような時代の漫画とは。思いを聞きました。

 ――新連載「コロコロ毛玉日記」はどんな漫画ですか。

 僕の家族は妻と大学生の息子、高校生の娘、犬2匹。昨年1月、ブリティッシュショートヘアの子猫が加わった。今は1歳半のこの猫「ケダマ」が超マイペースでね。コロナ禍の自粛ムードで憂鬱(ゆううつ)な日々も、うんと愉快にしてくれる。笑って、晴れた目で見れば、感染対策でがんじがらめの「新しい日常」にも笑いの種はあるもので。そんな僕と家族と動物たちの、等身大な日々をつづります。

「クマのプー太郎」「伝染るんです。」の時代から

 ――出世作「クマのプー太郎」は皮肉屋のクマと珍妙な仲間を人獣入り交じる世界に描く、「等身大」とは対極の不条理漫画でした。連載開始は1989年。吉田戦車さんの「伝染(うつ)るんです。」や中崎タツヤさんの「じみへん」と同じ年です。

 長く続いた「昭和」が終わり「平成」が始まった年でした。70~80年代の実験的な文化で育った我々世代が、ぼちぼちと世に出始めた時期。変革の機運とバブル末期の熱気の中で、不条理漫画は注目されて描き手も次々登場し、全盛の時代でもありました。

 ――なぜ続かなかったのでしょう。

 一変したのは95年です。1…

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