第1回「この『異常』はニュースでない」米アカデミー賞受賞監督が抱く葛藤

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聞き手 エルサレム支局長・高久潤

 パレスチナ自治区ガザへのイスラエルの攻撃が続く中、もう一つのパレスチナ自治区、ヨルダン川西岸の村を記録した映画が、米アカデミー賞を受賞した。共同監督の一人、バーセル・アドラーさんはこの村の住民だ。占領に苦しめられてきた彼は、パレスチナとイスラエルの共存について、どう考えるのか。

連載「2国家解決の行方」

イスラエル軍のパレスチナ自治区ガザへの攻撃は開始から1年半たった今も続いています。地域の平和への道筋とされてきた「2国家解決」(イスラエルと将来のパレスチナ国家の共存)は今も可能か識者らに聞きました。

 ――映画「ノー・アザー・ランド」は、パレスチナ人2人とイスラエル人2人が共に制作し、監督を務めた作品です。その一人、ユダヤ人のユヴァル・アブラハームさんとあなたの関係はどのように生まれたのですか。

 「映画の舞台となった私の故郷マサーフェル・ヤッタは、イスラエル軍や私たちの土地を奪ってそこに住むユダヤ人入植者による攻撃に、日常的にさらされています」

写真・図版

 「彼らは家を取り壊し、井戸にコンクリートを流し込み、立ち退きを強要する。村の人々が力を合わせて再建しても、また壊しにきます」

なぜ占領の異常さを伝えるために映画という手段を選んだのか

 「こうした異常な現実を取材…

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この記事を書いた人
高久潤
エルサレム支局長
専門・関心分野
グローバリゼーション、民主主義、文化、芸術
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    川上泰徳
    (中東ジャーナリスト)
    2025年4月22日18時43分 投稿
    【視点】

    映画「ノー・アザ―・ランド」ではイスラエル人のユヴァル氏と、パレスチナ人のバーセル氏の二人のジャーナリストが対話する場面が何カ所もあり、二人の「命がけの友情」を宣伝文句にしている。しかし、二人の会話はすっきりしない後味が残る。 このインタビ

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