保護された「セブン」は愛子さまの愛猫に 名前の由来は

力丸祥子

 保護猫「セブン」は、天皇家の家族になった――。天皇、皇后両陛下が各界の功労者らを招いて4月に開いた春の園遊会でも話題の的に。当初は警戒心を見せていたセブンだが、ご一家の愛情を受け、犬の「由莉」と猫の「みー」と穏やかに暮らしている。

 「飼い主のいない猫がいる」

 2016年8月下旬、東京都千代田区のある建物の管理者から、こんな相談が動物愛護団体「ちよだニャンとなる会」に寄せられた。

 建物の7階にある空中庭園にたびたびやって来るという。休憩しながらエサをくれる人を頼って母猫に連れて来られているらしく、同会が保護に乗り出した。

 外で暮らす猫の多くが、車にひかれるなど悲しい最期を迎えるため、同会は保護や飼い主探しにも力を入れていた。

 業務執行理事を務める香取章子さん(69)は当日、保健所の職員らと息を潜めて、子猫が現れるのを待った。

15歳だった愛子さまのひざの上、セブンが初登場

 しばらくすると、生後数ケ月の子猫が外階段をよちよち歩きで登って来た。夢中でえさを食べ始めたところで、保護した。

 建物の7階で保護したことから「セブン」と名付けた。

 その後、同会とともに活動する動物病院で人間に慣れる訓練をし、皇太子時代の天皇ご一家に引き取られた。

 後日、獣医師らの勉強会にプライベートで訪れた天皇陛下から「セブンちゃんが大変お世話になりました」と声を掛けられた。皇后雅子さまも「大変すばらしい活動をされている団体とうかがっています」などと話したという。

 区内では、01年度に72匹だった猫の殺処分を減らし続け、11年度以降はゼロを継続している。同会はこの活動に協力してきた。

 香取さんが再びセブンを目にしたのは、保護から約3カ月後。愛子さまが15歳の誕生日を迎えた際、宮内庁が「新たに譲り受けた子猫『セブン』を飼い始めた」と明かし、セブンをひざに抱く愛子さまの写真を公開した。

 保護したときは人への警戒心もあり、香取さんは「やんちゃな子なのでは」と心配だったが、愛子さまのひざのうえで行儀良く写真に納まる姿に安堵(あんど)した。

 保護猫は、譲渡先で新しい名前をもらうことが多いが「愛子さまがセブンという名前を気に入ってくれたらしい」と聞いたときは心からうれしかった。昨年の愛子さまの誕生日の際も、犬の「由莉」や猫の「みー」と一緒に暮らしていると紹介された。

雅子さま、園遊会で「猫談議」

 そして今年の春の園遊会。セブンが話題の的になった。

 「猫を2匹飼っております」

 そう言って雅子さまが小さなバッグから数枚のプリントされた写真を取り出した。

 現代美術家で愛猫家としても知られる横尾忠則さん(87)と対面した時だった。写真には、室内や庭の芝生の上で過ごす猫たちが写っていた。

 「ご家族が撮られたのかな」

 リラックスした様子に横尾さんはそう感じたという。

 愛子さまは、横尾さんが愛猫「タマ」を描いた画集を読んでいることに触れ、「昨夜、横尾さんにお見せしたい、と写真を選んでおりました」と明かし、ほほえんだ。

 雅子さまは1枚ずつ写真を示しながら、それぞれの生い立ちを丁寧に説明した。

 「この子は野良で生まれて、うちで保護しました」

 「これがもう1匹の今いる、保護された猫です」

 「この子は14歳、こちらが8歳」

 その語り口は、大切な家族の一員を紹介するようだった。陛下も一緒に写真をのぞき込み、楽しそうに話す雅子さまを優しい笑顔で見守った。ご夫婦の愛情があふれ、周囲を和ませた一場面だった。

 横尾さんは「まさか猫の話になるとは。びっくりと同時に、非常にうれしかった」と振り返る。「これまでも自然を大切にされるご一家だと思っていたが、園遊会では猫への特別な愛情も感じた。動物たちや自然への深い愛が、天皇家の高い霊性や自然体の生き方にもつながっているのではないか」

 園遊会で雅子さまが「8歳」と話した猫が、セブンとみられる。香取さんは、今回の園遊会で雅子さまが保護猫の活動に触れてくれたことへの喜びも大きい。

両陛下「犬や猫の殺処分に心を痛めている」

 「日本でも動物愛護の機運が高まりつつあるが、私たちのお手本として、保護猫活動に触れてくださったことに、励まされた」

 ご一家は、雅子さまの長期療養や愛子さまが通学に不安を訴えるなど、必ずしも順風満帆ではない時期もあった。そんな時でも「心優しいご家族は猫たちを通じて絆を育まれていたに違いない」と香取さん。

 18年秋、ご一家は日本動物愛護協会への寄付を目的としたチャリティー映画試写会を訪れた。

 このとき、側近は記者団に「数は減ってきているものの毎年多くの犬や猫が殺処分されていることに心を痛めておられる。現在お飼いになっている犬1匹、猫2匹はいずれも赤坂御用地や外で保護されたもので、こうした問題にもご関心が高い」と説明。ご一家の動物への思いとして「この映画を通じ、動物の命の重さや人と動物の絆や共生の大切さへの人々の認識が深まり、飼い主が責任と自覚を持って動物に向き合い、少しでも遺棄される動物が減ることを心より願っておられる」などと紹介した。

 両陛下は6月9日、31回目の結婚記念日を迎える。家族の一員としてそばにいるセブンに香取さんは「すばらしい飼い主さんに出会えて、あなたはやっぱりラッキーセブンちゃん。ずっと元気で長生きしてね」と伝えたい。(力丸祥子)

この記事を書いた人
力丸祥子
東京社会部|気象庁クラブ
専門・関心分野
防災、合意形成
上皇さま90歳 ご一家の写真で振り返る

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