規格外の果物をジェラートに 農家生まれのレストランオーナー

鈴木裕

 味や品質は変わらないのに、育ちすぎたり、ちょっとした傷があったりして出荷できない。そんな果物や野菜を使ったジェラートを、東京のイタリアンレストランのオーナーが開発した。

 「規格外野菜の廃棄量をまとめた正確なデータはなく、実情が明らかにされないまま農家だけが負担を抱えている」

 イタリアンレストラン「サルテリアデイジー」(東京都目黒区、https://www.saluteria-dg.com/別ウインドウで開きます)のオーナー増山大さん(38)はそう話す。

 増山さんは栃木県の農家の生まれで、野菜や果物を作ること、売ることの大変さを間近に見て育った。

 農家が手塩にかけて育てた農産物の廃棄を減らし、規格外野菜や果物を活用できないか。思いついたのは、それらの野菜や果物を農家から買い取り、イタリア料理の技法を生かしてジェラートに加工することだった。

 沖縄産のパイナップル、千葉のお米農家がつくった甘酒、静岡産のビーツ、長野産のブルーベリー、徳島産ブドウ、栃木産イチゴ、ナシなど、さまざまな規格外野菜や果物を使ってジェラートづくりを試した。

コロナ禍「来店客頼りは限界」

 素材の持ち味を生かして瞬間冷凍し、独自に整腸作用のあるビフィズス菌を加えた「腸活ジェラート」を開発。「食べる=健康」を掲げる自分の店の看板メニューにした。

 コロナ禍で新たな事業展開を模索する飲食店向けに、OEM(相手先ブランドによる生産)供給する事業も始めた。

 クラウドファンディングで募った資金で設備を整え、全国への配送や通販に対応できるようにした。農家と飲食店が手を携え合う仕組みとして、全国展開をめざしている。

 増山さんは、農家とともに、コロナ禍で売り上げ減少に苦しむ飲食店の支援にもなればと考えている。

 「コロナ禍の影響で、来店客だけに頼った経営には限界があるとわかった。通販などの新たな事業展開を考えている飲食店が、特色ある商品を提供できるようなOEM事業を提案したい」

 すでに都内の3店にジェラートを提供。和食店では「甘酒ジェラート」が話題になっているという。

 増山さんの夢は、フードロス農産物を活用したジェラートを提供する提携店舗を広げていき、それぞれの地域で特産の果物や野菜の「地産地消」を進めることだ。

 「廃棄ロス削減や地産地消に貢献することは、農家や飲食店の社会的な価値を高めることになる。SDGs(持続可能な開発目標)につながる取り組みであり、コロナ禍でダメージを受けた農家や飲食店を元気にしていきたい」(鈴木裕)

この記事を書いた人
鈴木裕
四日市支局長
専門・関心分野
地方行政、教育、地方経済