(社説)教員の精神疾患 実質的な働き方改革を

社説

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 「心の病」で休む公立小中高・特別支援学校などの教員の増加が止まらない。教員不足に拍車をかけ、子どもの教育に大きな影響が出かねない状況だ。国や自治体は、学校の働き方改革を実質的に進める方策作りを急がなくてはならない。

 文部科学省の調査によると、21年度に精神疾患で休職した教員は約6千人、1カ月以上の病気休暇も合わせると約1万1千人いた。全体の1・2%に当たり、人数・割合とも過去最多だ。同様の国の調査では、地方公務員は1・2%、民間事業者は0・5%だった。

 増加の要因として、文科省は▽保護者対応の複雑化やコロナ禍対応などで業務の質と量が増大▽教員間での仕事のバランスの偏り▽コロナ禍による教員同士のコミュニケーション不足、などを挙げる。

 心配なのは若手の割合の高さだ。特に20代で長く休んだ教員は1・9%にのぼる。採用抑制期に就職した40代が少ないうえ多忙なため、若手が悩みを相談できず孤立しているという。

 状況を改善するカギは、学校の働き方改革だ。

 教育委員会に尋ねた実態調査の結果から、文科省は公立小中学校で長時間労働は減りつつあるとみている。

 だが、日本教職員組合は教員約1万人への調査をもとに、自宅への仕事の持ち帰りが常態化していると発表。名古屋大大学院の内田良教授の約1千人の調査では、17%が書類上の勤務時間を少なく書き換えるよう求められた、と答えたという。

 見かけだけ労働時間を減らしても意味がない。国や自治体は、行事の精選やデジタル化での校務の効率化などで削減に成功した例を参考に、きめ細かな改善策を打ち出す必要がある。

 文科省は22年度、教員が労働時間を答える勤務実態調査をおこなっている。前回16年度の調査後は、働き方改革の一手として、夏休みなどに休日をまとめ取りできる変形労働時間制を導入した。だが、「業務改善が先だ」などと反発する教員も多く、活用は進んでいない。

 今春には今回調査の結果速報が出る。今度こそ、実質的な働き方改革につなげる政策を打ち出さなければならない。

 学校業務の見直しとともに、十分な教員や支援員の配置は欠かせない。さらに月給の4%分を一律上乗せする代わりに残業代は出さない、と規定する教職員給与特別措置法の抜本的な見直しも視野に入れる必要がある。この仕組みのまま上乗せ額を増やしても、長時間労働は解消しない。残業を減らす取り組みとセットで、正面から議論することが欠かせない。

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