(社説)電力不足予想 需給の安定へ抜本策を

社説

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 今年度の夏と冬に電力が不足する可能性があるとして、経済産業省が対応案をまとめた。電力の需給逼迫(ひっぱく)は今年1月にも起きたばかりだ。経産省や電力業界は当面の供給に万全を期しつつ、中長期的に需給を安定させる抜本策を講じる必要がある。

 電力を安定的に供給するには、最低でも需要を3%上回る供給余力が必要とされるが、東北から九州で7月の予想は3・7%。来年1~2月はより深刻で、東京電力管内で10年に1度程度の厳冬になれば、北海道や東北から送電線の空き容量いっぱいに送電しても0・3~0・2%のマイナスと、供給不足に陥る。沖縄を除く西日本も3%ぎりぎりを見込む。

 大手電力が、太陽光の増加で稼働率が下がった古い火力発電所を休廃止したことが大きい。来年2月を1年前と比べると、火力の減る分で前年の全供給力の3・5%が失われる計算だ。

 このため経産省は、冬に予定される発電所の補修時期をずらしてもらうほか、休止中の火力の再稼働を求めることも検討する。余力が3%を切ることが予測されたときに出す「需給逼迫警報」の前段として「警戒モード」を新設し、節電に向けた早めの準備を呼びかける体制もとる。

 次年度以降の抜本策の考え方も示した。火力発電の休廃止を事前届け出制にするなどして、需給に大きな影響を与える場合は実施を一時見合わせてもらうしくみを検討する。

 需給逼迫の多発は、電力自由化と安定供給の両立の難しさを示していると言える。高止まりする電気料金引き下げに市場の力を生かしながら、供給力の強化策を探らねばならない。

 例えば休止火力の再稼働や休廃止の見合わせを要請するなら、その費用はどう賄うのか。再稼働では小売り側などに負担を求める方向だが、保有設備も経営体力もバラバラな約700の小売事業者すべてに公平な制度を作るのは簡単ではない。

 脱炭素社会に向かうには、大量の二酸化炭素放出につながる古い火力頼みは続けられない。原発も、抱えるリスクの大きさや国民の不信、放射性廃棄物の問題を考えれば、当てにするわけにはいかない。

 やはり、再エネの拡大を急ぐべきだ。太陽光だけでなく、風力や地熱などをバランスよく組み合わせるほか、広域の送電線網や蓄電技術の強化など、安定性を高める努力も求められる。

 年初の逼迫の教訓も生かし、今回は早めに不足の可能性と対策が示された。電気を使う消費者や企業も、生命や経済活動に不可欠な使用以外で節電の余地がないか考えたい。

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