(社説)第4波と経済 感染抑え着実な回復を
東京や大阪への緊急事態宣言で、日本経済に3度目の重圧がかかる。「コロナ後」への動きが進む国もある中でもどかしい状況だが、感染拡大の速やかな抑止こそ本格回復の前提であることを、改めて確認したい。
4月25日からの緊急事態宣言は、まず5月11日までとされた。民間シンクタンクの試算では、この期間の消費の下押しは数千億円程度と見込まれる。
ただ、変異株の猛威を踏まえれば、目指す水準まで感染を抑え込むのは、期限内には難しいとの見方も多い。長引けば消費への影響は拡大し、数兆円に及ぶとの試算もある。これまでも打撃が集中してきた飲食、宿泊、交通など対面サービス部門にとっては深刻な事態だ。
それでも、解除を急ぎ過ぎれば再び感染が広がり、すぐに緊急事態宣言を要する局面に陥りかねない。それでは経済への負担も結局大きくなる。
であれば、やはり当面は経済活動を抑制しつつ、苦境にある働き手の生活と将来の事業基盤の底支えに、万全を期すことが求められる。とりわけ、パート労働者ら非正規雇用の仕事が失われたり減ったりすることの影響には、十分配慮すべきだ。
現在の第4波の負荷が相応に重いとはいえ、日本経済全体の回復基調が揺らいでいるわけではない。対面サービス以外の内外需はおおむね堅調で、21年3月期決算では最高益を記録する企業も相次いでいる。過度に悲観的になる必要はない。
今回の緊急事態宣言後の27日に日本銀行が出した「展望リポート」は、20年度の実質成長率をマイナス5%程度、21年度の成長率をプラス4%前後と見込む。ただし、ワクチン接種が進み、それまでの間、企業や家計の成長期待と金融システムの安定が保たれるのが前提だ。
コロナ禍はインドなどで深刻化している。一方で、ワクチン接種の進む米国などでは消費や雇用の回復が進みつつあり、そうした国と比べれば、日本経済が立ち直る時期は遅れる場合もありそうだ。国内消費に加え、国際的な旅行が回復してきたときに受け入れが遅れざるを得ない状況が続くことになれば、残念ではある。
とはいえ、外需の強さは日本経済にとってもプラスだ。デジタル化の進展や脱炭素といった技術開発の動向を見極めながら、海外の需要も取り込み、コロナ後の国内経済の着実な成長を図る機会とすべきだろう。企業は人材や研究開発への投資を惜しんではならない。
一方で、局面変化の時期だけに、経済が上下に大きく振れるリスクもある。とりわけ金融市場の動向には注意が必要だ。