(社説)五輪組織委 市民に顔向けて仕事を
東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長に橋本聖子氏が就任して1カ月半になる。トップを代え、女性理事も大幅に増やして体制一新を図ったはずなのに、人々の不信を深める混迷・失態が続く。
なかでも驚きあきれたのは、週刊文春が掲載した記事を問題視して、発行元に雑誌の回収やネット記事の削除などを求めたことだ。開会式の演出案を入手してその一部を報じたのは、著作権法違反や業務妨害などにあたると主張している。
自分たちの内部統制の甘さを棚にあげて、国民の知る権利の制約につながる回収や削除を、公の存在である組織委が迫る。異常と言うほかない。
著作権法は、報道目的であれば正当な範囲内で著作物を利用することを認めている。そして開会式のあり方に関しては、責任者の度重なる交代に加え、出演者を侮辱するような企画案を前の統括役が示していたことが明らかになり、社会の関心が寄せられている。文春側が要求を拒否したのは当然である。
組織委の振る舞いの端々にのぞくのは、「五輪のため」といえば誰もがその意向に従うし、また従うべきだという、まさに五輪至上主義の考えだ。
日本で、世界で、コロナ禍が収まる気配をみせず、五輪を開催する意義そのものが問い直されているときに、とても通用する態度ではない。
前後して起きた五輪テスト大会をめぐるトラブルも同様だ。
国際水泳連盟が1日、組織委などに対し、4~5月に日本で予定していた国際大会の中止を検討している旨を伝えてきたという。日本のコロナ対策や入国管理への疑義があるといわれるが、具体的に何を問題としていて、日本側はどんな解決策を考えているのか、組織委から適宜適切な説明が求められる。
大会は準備態勢を確認する重要なステップとされ、他の競技ひいては五輪総体にも影響が及びかねない話だ。社会に臆測や不安が広がるのは当然だ。
コロナ禍という前例のない状況のもと、競技団体や参加国の事情も絡んで、ある程度の混乱があるのはやむを得ない。しかしそうだからこそ、状況をすみやかに把握・調整し、市民との間にコミュニケーション不全を起こさないようにするのが、組織委の役割のはずだ。
始まった聖火リレーにも、約束していた感染対策はどこまで実践されているのか、スポンサー企業の宣伝色が強すぎないかなどの疑念の声があがる。
橋本氏が会長に就任した際、社説は「情報の公開と丁寧な説明が不可欠」と指摘した。その思いはますます強い。
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