(社説)ミャンマー 国際社会は介入強めよ

社説

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 銃撃され動けなくなった市民を炎の中に放り込む。バイクですれ違う丸腰の若者らに、一斉射撃を浴びせる。残虐な映像と報道に、言葉を失う。

 国軍がクーデターにより権力を奪ったミャンマーの惨状である。国際社会はあらゆる介入を強め、暴力と流血を一日も早く止めねばならない。

 「国軍記念日」だった27日、再び各地で悲劇がおきた。抗議デモを治安部隊が弾圧し、100人以上が死亡した。

 2月1日の政変以降、犠牲者は400人を超すとされる。NGOによると、うち20人超は子どもだという。民家を捜索した部隊が、7歳の少女を射殺したとの報道もある。

 国軍がいう「暴徒」はデモ隊ではなく、国軍と治安当局自らである。そもそも選挙の結果を受け入れずに武力で民政を覆した経緯も含め、国軍が強権をふるう正当性はない。

 事態の悪化を受けて、国連の人権理事会では「人道に対する罪にあたる可能性が高い」と国軍を指弾する報告があった。

 米欧日など12カ国の軍や自衛隊制服組のトップは、異例の共同声明を出した。「軍は国民に対し、危害ではなく、保護する責任を持つ」と非難したが、国軍が強気の姿勢を崩す兆しはみえていない。

 その背景にあるのは、人権などを理由にした国際社会の介入を嫌うロシアと中国の存在だ。

 国軍が催した27日の軍事パレードを含む式典も、日本や欧米が欠席するなかで、ロシアや中国など8カ国は出席した。とりわけロシアは国防次官を送り、国軍トップは「真の友人だ」と持ち上げた。

 中ロを含む国連安全保障理事会は今月、「デモへの暴力を強く非難する」との議長声明を出した。それなのに国軍の後ろ盾になるかのような言行不一致は、無責任というべきだ。

 ミャンマーの混迷が続くにつれ、国内社会はまひし、経済や市民生活への影響も深まっている。インドやタイなど隣国に逃れる人も増えている。

 国内の治安にとどまらず、アジア地域の平和と安定を揺るがす問題だ。米欧と中ロの対立を持ち込む場合ではない。早急に安保理を開き、さらに強い措置を検討するときだ。

 日本は、国軍を名指しで非難する外相談話を出したが、バイデン米大統領らに比べれば首脳の発信が乏しい。法の支配など日本が掲げる価値観を再確認するためにも、首相が強い声明を発する必要があろう。

 同時にアジアの一員として、国軍に影響力を持つ中国にも働きかけるなど、事態の打開をめざす外交努力が求められる。

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