(社説)ミャンマー 蛮行止める国際圧力を

社説

 市民の命を奪う蛮行をただちに停止せよ。ミャンマー国軍に断固として求める。

 クーデターにより民政が権力を奪われてから1カ月あまり。抗議デモに対する武力行使が広がり、3日には数十人が死亡する事態になった。

 街頭に繰り出した無抵抗の市民に、治安当局が実弾射撃したという。国連の担当特使は「政変後で最も血塗られた日になった」と憤った。

 これまで国軍に自制を求めた国際社会の要求は聞き入れられていない。さらなる流血を避けるためには、実効性のある国際圧力の強化が必須だ。

 その役割をまず担うべきは、国連安全保障理事会である。日本時間6日、緊急協議を開く。各国が一致して、国軍に厳しい態度を示さねばならない。

 政変直後の安保理は、中国とロシアの抵抗で非難決議に至らなかった。クーデターとも認定せず、報道声明で「深い懸念」を表明するにとどまった。

 市民がこれだけ殺されてもなお安保理の姿勢が変わらないなら、国軍に誤ったメッセージを与えることになる。

 とりわけ責任が重いのは中国だ。ミャンマーの最大の貿易相手国で、国軍とも関係が深い。国軍をかばうならば、抵抗する市民のなかに広がる中国への反感や不信は、いっそう深まるだろう。

 安保理は近年、中ロと米国の対立による機能不全が深刻だ。中東のシリアやパレスチナなどの紛争に限らず、コロナ禍でも十分な対応を示せていない。

 米国で自国第一主義のトランプ政権が去り、バイデン政権に代わったいま、国際協調を主導すべき安保理の重責を再生できるか。ミャンマー問題は、その試金石となろう。

 国軍の強硬姿勢を変えるためには、近隣諸国による説得も欠かせない。鍵を握るのはミャンマーも加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)である。

 先ごろ開いた外相会議では、暴力の停止や、拘束されたアウンサンスーチー氏らの解放を求めた。内政不干渉を原則とするなかでも、一歩踏み出したことは評価できる。

 東南アジアでは近年、タイでも民主化の後退に抗議する市民の動きが続いている。地域情勢をこれ以上不安定にしないためにも、ASEANの枠組みで取り組みを強めてほしい。

 欧米はミャンマーへの制裁を強める構えだ。日本は新規の途上国援助(ODA)を止める方向だが、いかにも手ぬるい。

 民主主義や基本的人権といった普遍的な価値を掲げ、欧米やASEANとも連携して国軍への圧力を高める必要がある…

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