(EYE モニターの目)今月のテーマ:がんとともに

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 ■記事に物足りない部分あった

 一連の記事で、大勢のインタビューが掲載されていたのは良かったが、まとめられ過ぎていて物足りない部分もあった。例えば2月4日1面の「コロナ禍 遅れるがん発見」。コロナ禍で忘れられがちながん検診の重要さが示されていて、導入としては良かった。しかし、1面以外の面で山本真代さんの体験談が詳しく掲載されているかと思ったら、別の人が登場していた。がんと診断されると、仕事、家族、交友関係などにどんな変化があるのか。詳しく、読みたかった。(高橋亮 34歳 東京都)

 ■早期発見の技術、知りたい

 一連の記事で、がんの当事者や患者家族の話を読み、勇気づけられた。2月3日生活面「AI 早期の大腸がん見つける」のような、がんの早期発見につながる技術のことを知りたいと思った。血液でいろいろながんの検査をできるような研究も進んでいると聞くが、どこまでできるようになったのか、そして費用はどのぐらいかかるのか。私は以前、PET(陽電子放射断層撮影)やCTによるがん検診を受けたので、現在のがん検診の精度についても知りたい。(長江睦 50歳 宮崎県)

 ■患者に寄り添う記事を

 2月4日2面の「ひと」や、特集面の「初めての人生 楽しまなくちゃ」など、前を向こうとする人の記事が多いように感じた。がんで苦しんでいる人を元気づけようとしているのかもしれないが、かえって励まされすぎて「もっと一生懸命生きなければ」という呪縛にとらわれてしまうのではないかと思った。闘病生活を送っているだけで、あなたはもう立派に頑張って生きているよというような、患者に寄り添う形で、その人を元気づける記事が増えることを望みたい。(内山千明 19歳 愛知県)

 ■公的援助、詳しく載せて

 10年以上前、悪性リンパ腫で闘病した。高額療養費制度を利用しても、医療費の出費は大きかった。地下鉄やバスなどの利用がつらくて、タクシーで通院したり、ウィッグが高額だったり、日常生活上の経済的負担も大変だった。がんになって、収入の減少や退職を余儀なくされる人も少なくない。闘病だけでも大変なのに経済面の負担までのしかかってくるのは、想像を絶する。どのような公的援助を受けられるのか、どこへ相談すればいいのか、詳しく知らせてほしい。(大場菊枝 69歳 宮城県)

 <多様な生き方や思い、報じていきます>

 2年余り前、取材で苦楽をともにした同僚が膵臓(すいぞう)がんで亡くなりました。2度の手術でがんを取れず1年後の生存率は10%と言われたそうですが、3年近く生きてコラムを書き続け、一冊の本を残しました。彼はこう記しています。

 「一人の人間はいつまでも同じ状態ではない。病気になることもあれば、なりたい姿になれることもある」

 朝日新聞はがんをめぐる報道に力を入れています。2月4日、21日付の特集では、がんを契機に新しい人生を切り開き、挑戦を続ける方々の姿を紹介しました。プロデューサーのつんく♂さんは「病気になったからといって、心の中まで病気に伏せる必要はないのです」。治療法の進歩で、がんになったとしても「なりたい姿」を追い求めることはできる。そんな希望をお伝えできればと考えています。

 他方、「励ます」ことが「一生懸命に生きなければ」という縛りをかけていないか、という趣旨のご意見には、はっとさせられました。患者、サバイバーのみなさんを前向きに励ましつつ、多様な生き方、思いを報じていく――。がん報道はどうあるべきか、きょうも考え続けています。(科学医療部長・西山公隆)

 ◇東京本社発行の朝刊、夕刊の最終版をもとにしています

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