(社説)宣言地域拡大 態勢の立て直しを急げ

社説

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 首都圏の1都3県に緊急事態を宣言してから1週間もたたないうちに、政府が大阪、愛知、福岡など7府県への対象地域の拡大を決めた。

 新型コロナウイルスの感染が急拡大し、医療提供体制の逼迫(ひっぱく)に危機感を募らせた自治体の要請に押されてのことであり、場当たり的との印象は否めない。

 菅政権はこれまで、感染防止と経済活動の両立に腐心してきた。「Go To トラベル」事業の全国一斉停止に二の足を踏んだのもそのためだ。

 全国的に感染が広がるなか、宣言の対象をまず首都圏に絞り、対策を感染リスクが高いとされる飲食店の時短強化に集中させたのも、経済への悪影響をできるだけ避けたいという思いの表れだろう。

 しかし、今は感染の抑止に明確に軸足を移し、政府の総力をあげる局面ではないのか。中途半端な対応では、国民に危機感は伝わらない。

 一例が、不要不急の外出自粛要請だ。菅首相は宣言を出した際の先週の記者会見で、「夜8時以降」との言葉を何度も繰り返した。これでは、それ以前の時間帯であれば、外出しても大丈夫との誤ったメッセージになりかねない。首相はきのうの会見では、「日中も」自粛して欲しいと訴えたが、後手に回っていると言わざるを得ない。

 一足早く宣言を出した首都圏では、おおむね人出が減っているものの、昨春の宣言時のような大幅な減少には至っていないという。幅広い施設に休業を求めていないためでもあろうが、それだけ緊張感が共有されていないともいえる。

 新年に入ってからの感染急増の原因については、専門家も十分、分析はしきれていない。年末年始の帰省やその際の飲食だけでは説明できないとの見方もある。であれば、なおさら、最悪の事態も想定し、早め早めに手を打つことが、政府と自治体の責務である。その際、専門家の知見を踏まえ、明確で説得力のある発信が求められることはいうまでもない。

 首相は「1カ月で感染拡大を絶対に阻止する」との決意を強調するが、具体的な展望が語られているとは言いがたい。多くの人々がそれは難しいと思っているのが実情ではないか。首相の言葉、政府の施策に国民が信を寄せることなくして、この深刻な状況を乗り切ることはできまい。

 11都府県以外にも、宣言の対象地域に加えるよう求める動きがある。政府は自治体との連携や専門家との意思疎通を密にするなど、態勢を立て直し、国民の命と暮らしを守ることに全力を挙げねばならない。

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