(患者を生きる:4061)新型コロナ 後遺症:5 情報編 原因も症状もさまざま=訂正・おわびあり
熱やだるさ、嗅覚(きゅうかく)・味覚の異常や胸の痛み……。新型コロナウイルスに感染した人のうち、PCR検査で陰性が確認された後も長く症状に苦しむ人が一定の割合でいる。いわゆる「後遺症」だ。各国から報告が相次いでいる。
143人を分析したイタリアの報告では、発症60日後の段階で、だるさ、呼吸困難、関節痛など何らかの症状が残っている患者は87・4%にのぼり、44・1%の患者が生活の質の悪化を訴えていた。
国内では、国立国際医療研究センター病院(東京都新宿区)を2~6月に退院した患者63人について調べた研究がある。発症60日後には、嗅覚障害12人(19%)▽息苦しさ11人(18%)▽体のだるさ10人(16%)▽味覚障害3人(5%)が確認された。
和歌山県の聞き取り調査では、退院後に何らかの症状があったのは患者163人のうち75人。複数回答で具体的な症状を尋ねると、嗅覚障害30人、倦怠(けんたい)感26人、味覚障害20人、呼吸困難感20人、脱毛12人、記憶障害6人という結果が出た。味覚や嗅覚の障害は、重症度に関係なく約2割の人で続いていたという。
こうした後遺症は、どのようにして引き起こされるのか。日本呼吸器学会理事長の横山彰仁(よこやまあきひと)・高知大教授は、複合的な要因があると分析する。
一つはウイルスが細胞を直接攻撃したり、ウイルスを撃退しようとして「サイトカインストーム」と呼ばれる免疫の暴走が起きたりして、臓器障害を引き起こした影響だ。重い肺炎になったり、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)が治る際に細胞の壁が硬くなる「線維化」が起こったりして、長引く呼吸苦や息切れの原因になる。
もう一つは、療養環境だ。病院や施設に長期間隔離され、家族や友人らと会えずに過ごしたことによる精神的ストレス、また入院や療養の長期化による筋力低下も影響する。
まだ治療法は確立されておらず、対症療法が中心となる。「診療科の連携に加え、精神的なフォローも必要だ」と横山さん。後遺症については、厚生労働省が三つの研究班を立ち上げ、来春をめどに報告をまとめる予定だ。(熊井洋美)
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<訂正して、おわびします>
▼27日付生活面「患者を生きる 新型コロナ 後遺症」の記事で、国立国際医療研究センター病院での研究で「味覚障害33人(5%)」とあるのは、「味覚障害3人(5%)」の誤りでした。データを書き写す際に誤りました。