(社説)GoTo事業 柔軟に見直す仕組みに

社説

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 旅行支援策「Go To トラベル」の対象に10月から東京都を加える方針を、政府が表明した。都を対象から外したままでは需要刺激の効果が十分に発揮できず、公平性の観点からも問題がある。新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いてきた現状を踏まえた判断だろう。

 しかし実施の前に、政府には二つの注文をつけたい。

 まずは、感染の動向に応じて、支援策を柔軟に見直す仕組みをつくることだ。

 確かに都の感染者数の増加はピークを越えたように見えるが、医療機関への負担は依然として重い。政府も東京追加については「9月下旬にかけての感染状況を踏まえ、最終的に判断したい」としている。想定ほど感染が抑えられなければ、ためらわずに撤回すべきだ。

 東京だけの問題ではない。これからはインフルエンザも流行する秋冬を迎える。判断の遅れが決定的な結果を招かぬよう、どのような状況になった地域は対象から外すのか、ルールを決めておく必要がある。

 一昨日の政府の分科会は、感染状況が2番目に深刻な「ステージ3」以上となった都道府県を除外するよう提言した。政府は自治体と調整し、速やかに詳細を詰めなければならない。

 除外を決めれば混乱が避けられない。キャンセル料を誰が負担するのかも事前に定め、国民に周知しておく必要がある。

 次に、政府は支援策の効果と、感染拡大への影響を、不断に検証することが求められる。データを都合よく解釈したり、根拠なく成果を誇張したりすることは慎まねばならない。

 この支援策は、全国的に感染が拡大している時期に、税金を投じて人の移動を促すという矛盾を抱えて始まった。国民の不安を解消するには、現状を丁寧に説明することが欠かせない。

 観光庁によると、9月3日までの1カ月強で少なくとも延べ781万人が支援策を利用した。これは昨年8月の国内旅行の1割強に過ぎない。にもかかわらず、菅義偉官房長官は、「(支援策を)やらなかったことを考えたら大変なことになっていた」と述べている。

 菅氏は「(支援策の利用者で)判明している感染者は7人にとどまっている」とも強調するが、これはあくまで宿泊・旅行業者が観光庁側に報告した人数だ。厚生労働省に助言する専門家組織のメンバーも「妥当性が無い」と苦言を呈している。

 政府への不信感があっては、積極的に支援策を使う機運は盛り上がらない。国民の信頼を得ることが、観光業者の経営を下支えする第一歩であることを、政府は肝に銘じるべきだ。

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