(社説)台風への備え 教訓に学び より確かに

社説

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 九州の西を北上した台風10号は、各地に土砂災害や冠水などの被害をもたらした。台風の季節はまだ続く。気を抜かずに、今後に備える必要がある。

 気象庁国土交通省は3日から連日、合同で記者会見を開いて、「特別警報級」という言葉を使って警戒を呼びかけた。鉄道各社は計画運休を決め、自治体による避難指示・勧告の対象は850万人を超えた。台風が接近するかなり前から、避難所やホテル、安全な親類宅などに身を寄せた人も多かった。

 雨風が強くなってからでは身動きできなくなるという繰り返しの呼びかけが、効果を発揮したと言っていいだろう。こまめな情報提供と早めの避難の二つが防災の基本であることを、再認識させる結果となった。

 今回の台風は、雨とともに強風が大きな特徴だった。電柱が倒れたり電線が切れたりして、広い範囲で停電が発生した。エアコンを使えないと体にこたえる季節だ。電力会社は早急に被害の実態を把握し、復旧に全力をあげなければならない。

 1年前に房総半島を襲った台風15号でも、約2千本の電柱と送電線の鉄塔2基が倒壊し、約93万戸が停電した。復旧までに約2週間かかり、その間に熱中症で亡くなる人も出た。

 東京電力が今年1月に公表した検証報告書は、復旧に時間を要した理由として、対応する要員の不足に加え、道路の寸断や倒木の状況について、道路管理者である市や県と情報を共有できなかったことを挙げた。

 教訓を踏まえ、東電は管内の都県や市町村と災害時の連携協定を結び、自治体の災害対策本部に連絡員を派遣することなどを決めた。ライフラインの維持を担う企業や団体は、こうした取り組みも参考にして、その責任を果たしてもらいたい。

 今回の台風でも一部の建物の屋根や壁が壊れたが、昨年の15号では千葉県だけで7万棟を超す住宅が被害を受けた。国は、一部損壊を含めて被災住宅の修理費の補助を決めた。だが業者の不足などが原因で、8月現在で約6千件の申請に対し、工事を終えたのは3600件にとどまるという。

 未修理のままでは雨漏りや、残った瓦が飛ばされる恐れがある。自治体は積極的に相談に応じ、業者を仲介したり、たとえば被災者が高齢者であれば、職員が訪問して支援の仕組みを説明したりして、地域の安全安心の確保に尽力してほしい。

 近年、日本近海の海面水温が高く、台風は強い勢力のまま近づく傾向がある。うまくいった点、そうでなかった点を過去の災害に学びつつ、被害を最小限に抑える取り組みを進めたい。

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