(社説)コロナ追加対策 現場の声に耳傾けて

社説

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 政府が追加の新型コロナ対策を発表した。ワクチンの確保から医療機関の経営を安定させるための交付金のさらなる支給まで、内容は多岐にわたる。

 かねて言われてきた施策や、具体論がないまま方向性を示すにとどまったものもある。安倍首相が無責任に辞任するわけではないことをアピールするために、急ぎ取りまとめた感もにじむが、冬を迎える前に方針が示されたのは評価できる。

 コロナとインフルエンザが同時に流行すれば、保健所や医療機関はこれまで以上に厳しい状況に陥る。症状から両者を区別するのは難しく、二つの検査の速やかな実施が求められる。

 そこで政府は、その場で判定できる抗原検査を「1日平均20万件程度」に大幅拡充するとの目標を打ち出した。また、流行地域の病院や高齢者施設で定期的に患者・入所者の検査を行うことや、県境を超えて保健師らを応援派遣する仕組みの整備なども盛り込まれた。

 いずれも重要な課題だが、政府が旗を振ってもPCR検査の件数がなかなか増えなかった現実がある。現場の意見や要望に耳を傾け、ヒト・モノ・カネのすべての面で実効ある支援をしていく必要がある。

 大切なのは流行の兆しを確実にとらえて、早期に封じ込めることだ。6月以降の「第2波」は、東京を中心に感染者が増加傾向をみせていたにもかかわらず、政府が特段の対策をとらないまま全国的な流行に至ったのが実態ではないか。感染拡大の局面に入ってしまえば、いくら経済活動のアクセルを踏んでも効果は期待できない。政府もそのことを痛感したはずだ。

 追加対策には、コロナの法令上の位置づけや感染者への対応を見直すことも書かれている。

 軽症や無症状の場合、ホテルや自宅で療養する人が増えているが、現行制度下ではあくまでも入院が原則となっている。これが保健所や医療機関の負担を増やしているとして、取り扱いを改め、資源を重症者に集中させようという考えだ。

 狙いはわかるが、管理が緩くなることで感染が広がるおそれはないか、軽症者の病状の急変に対応できるかといった不安もある。全国知事会は「地方の意見を十分に聴き、実態に即した慎重な検討をするよう強く求める」とのコメントを出した。

 今後、政府の分科会や専門家らが見直しのメリット・デメリットを整理するというが、コロナ対策の根幹に関わる問題だ。結論ありきで進むのは良くない。様々な視点から検討するのはもちろん、考える材料を市民にきちんと提示し、社会の広範な理解と合意をめざすべきだ。

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