(社説)番組か広告か 視聴者惑わせぬ放送を

社説

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 番組なのか広告なのか、はっきりしない――。放送倫理・番組向上機構BPO)が地方の民放テレビ局に対し、放送倫理に違反する行為があったと判断する例が相次いでいる。

 テレビ離れや地域の人口減少地方局の経営環境は厳しい。広告主の動向にこれまで以上に気を使わざるを得ない状況だ。

 だが広告と混然一体となったような番組づくりは、放送への信頼を揺るがし、結局は自らの首を絞めることになる。公共の電波を割り当てられ、独占的に使用している責任の重さを踏まえた対応が求められる。

 問題ありとされた一つは、大手コンビニの沖縄進出を伝えた昨年9月の琉球朝日放送の番組だ。BPOは、企業や商品の宣伝色が強いことや、局がそのコンビニを「特別協力」と紹介するのでは視聴者の印象に残りにくいと考え、事実と異なるのに「提供」と表示したことを、倫理違反と結論づけた。

 北日本放送(富山県)は昨年10月、資産運用や投資教育の大切さを伝える番組を放送した。こちらは逆に、地元の金融商品仲介会社の1社提供番組なのにそれを明示しなかった。内容も同社の事業をPRする要素が目立つとBPOは判断した。

 いずれも営業部門が企画立案に関わったもので、放送前に内容を点検する「考査」も、結果として機能しなかった。

 日本民間放送連盟は17年、別の地方局の番組にステルス(見えない)マーケティングの疑いがあると週刊誌が報じたのを機に、「留意事項」を作成した。

 特定の商品やサービスを取り上げることは、有益な情報提供となる一方で、誤解を招く恐れもあると指摘。▽扱う理由や目的が明確か▽一方的なPRではなく、視聴者にフェアな内容か▽企業や団体などから特別な協力を得た場合に、その旨を明らかにしているか――の三つの基準を「例示」したうえで、番組ごとに総合的に判断する必要があると注意を促した。

 今回の2放送局の前にも、長野放送の番組が同様の問題で放送倫理違反と認定されている。頻発する不祥事は、正しい認識が現場に十分浸透・共有されていない証左といえよう。

 民放連の留意事項が例示にとどまったことが示すように、番組か広告かを峻別(しゅんべつ)できる物差しはない。見る人や社会状況によっても評価は微妙に違うだろう。だからこそ放送局には、部署や担当者の利害、思惑を超えた多角的な吟味が求められる。

 新聞やネットも他人事ではない。受け手に疑念を抱かれないようにする。このことを常に念頭に、発信する内容や表示の仕方をチェックする必要がある。

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