(社説)コロナと被災地 支援は要請に基づいて

社説

 ことしは梅雨がなかなか明けず、各地で河川の氾濫(はんらん)や浸水などの大きな被害が起きている。

 新型コロナ禍の収束が見通せないなかで、災害に見舞われた地域を「域外」からどう支えていくか。

 NPOや個人のボランティアが全国から被災地に入り、それによって現地で感染が広がるようなことがあれば、復旧・復興はかえって遠のいてしまう。

 いまは前のめりにならず、地元からの要請に基づいて行動する。この基本を徹底したい。

 今月初めの豪雨で多くの犠牲者が出た熊本県南部では、ボランティア活動の受け入れを県内在住の市民と団体に限る措置を続けている。

 これに先立ち、被災地でボランティアセンターの開設・運営を担う社会福祉協議会の全国組織と、主な災害支援団体でつくるNPO法人は、コロナ禍を受けた活動の指針をそれぞれ公表した。どちらも従来のスタイルを戒め、まずは近隣の市区町村から応援に入り、広げる場合も「県内まで」を基本としている。熊本県がとっている措置はこれに沿うものだ。

 とはいえ、家屋を埋めた土砂や使えなくなった家財の撤去には多くの人手がいる。県内から出発するボランティアバスを増やすなどの対策がとられているが、いまだ完了のめどがつかない地域も少なくない。

 土砂や廃棄物の処理については国の補助制度もある。こうした公的な仕組みも柔軟に活用すべきだ。状況に応じて、補助のあり方を拡充することも検討してもらいたい。

 県外からの支援を受け入れる時期も早晩来る。それを想定した準備も必要だ。

 熊本県では、他県から被災地に入った公務員や、取材活動をしていた記者が感染していたことがわかり、接触した可能性のある多くの避難者たちがPCR検査を受ける事態になった。

 政府のコロナ対策を検討する専門家らの分科会は先日、「検査体制の基本的な考え・戦略」に「被災地対応については、支援活動が円滑に行われるよう、別枠で検討する」と盛り込んだ。どんな立場の人から優先して検査するかなど、政府は具体策づくりを急いでほしい。

 忘れてならないのは、被災地に入らなくても役に立てる活動はあり、すでに様々な工夫が始まっているということだ。

 オンラインを使えば、遠くからでも支援のノウハウを関係者に伝えたり、被災者の話を聞く「傾聴ボランティア」を実践したりできる。お金を寄付することも有効な手段の一つだ。

 まずは被災地外から、できる支援を重ねたい…

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