(社説)骨太方針原案 存在意義が疑われる

社説

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 政府が毎年つくる「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)は、将来のあるべき社会の姿を提示し、それに向けた中長期的な政策の柱を書き込むはずのものだ。新型コロナウイルスの感染拡大で社会が大きく変わろうとしている今こそ、その必要性が高まっている。

 だが、骨太方針は近年、各省の予算獲得にお墨付きを与える政策集に成り下がり、細かい施策の羅列になってきた。本来の姿に戻すため、今年はページ数を前年の半分の35ページに減らしたというが、「骨細」ぶりは相変わらずだ。

 コロナ禍が浮き彫りにしたのは、感染症対策の体制の手薄さだ。原案では、国民がいま大きな関心を寄せる課題について、応急措置として足元で進めている検査や保健所の体制強化にふれてはいる。しかし行政改革で感染症対策の予算や人員を減らしてきたこれまでの流れを、中長期的にどう見直すかには踏み込んでいない。

 目玉施策に据えたのは、行政手続きのオンライン化などのデジタル・ガバメントの構築だ。世界で加速が予想されるデジタル化を、柱に据えること自体は理解できる。

 だが、経済の活力をもたらす主役は、あくまで民間企業だ。

 企業が新たなデジタルビジネスに挑むのを後押しするため、規制緩和などで事業の環境を整備する。こうした取り組みこそ政府には求められる。

 コロナ禍を経て、必要な政策はこれまでとは変わるはずだ。優先順位が下がった政策は見直さねばならない。ところが原案には、各省庁の既存施策の多くがそのまま盛り込まれた。

 行き詰まったインバウンド(訪日観光客)の誘致は、2030年に6千万人に増やす従来目標を据え置き、空港やスノーリゾートなどの整備を続ける。テレワークの普及で人の移動が減る可能性があるのに、高規格幹線道路整備新幹線の整備も書き込まれた。

 予算を減らされる省庁や関係が深い国会議員の説得が難しいからだろう。ただ、コロナ対策の予算がかさむ中で、いたずらに財政赤字を垂れ流すのでは、あまりに無責任ではないか。

 2025年度に基礎的財政収支を黒字化する従来の財政健全化目標は記載が見送られた。前提だった高い経済成長による税収増のシナリオが崩れた今、もはや達成が不可能なのは明らかだ。

 ならば、今後はどのような考え方で新たな目標をつくり、そこへの道筋を描いていくのか。その入り口も示さずに議論を避けるのでは、骨太方針をつくる意味はない。

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