(社説)高校生の就職 コロナ下で支援を厚く
長引くコロナ禍は学校生活に大きな空白をもたらした。
高校・大学入試への影響をどう軽減するかについては社会の関心が集まり、一定の措置を講じる方向で検討が進む。だが、手当てが必要なのは進学問題だけではない。景気低迷の直撃を受ける就職志望者、とりわけ高校新卒予定者が置かれている状況は近年になく厳しい。
主な働き口である製造業や小売り、サービス業のダメージは大きく、全体に採用が減る心配がある。国や自治体は手厚い支援策を考えなくてはならない。
採用選考の開始は例年より1カ月遅い10月半ばと決まった。長期休校による準備不足を配慮したものだが、進路を考える時間を確保できる代わりに、実際の活動期間は短くなる。
教員は授業の遅れを取り戻すことに手いっぱいで、就職指導に力を割けない恐れがある。生徒のアピール材料になる各種検定試験や部活動の大会も、延期や縮小、中止が相次いだ。
こうした悪条件が重なり、高3生の不安は増している。精神面のケアも含めた相談態勢の充実が求められるゆえんだ。
たとえば、キャリアカウンセラーや就職に詳しい退職教員を学校現場に派遣し、生徒、教員双方のサポートをしてもらうようにしてはどうか。逆に授業のほうを手助けする要員を追加配置してもいい。個々の教員に心身の余裕をもたらし、就職支援の実も上がるだろう。
夏休みに多く催される職場見学も、休暇期間の圧縮と感染防止の要請から、今年はどこまで実施されるか不透明だ。各企業は、社員が働く様子を紹介する動画をオンラインで視聴できるようにするなどして、生徒が会社の雰囲気に触れる機会をなるべく多く提供してもらいたい。
景気の後退が地域間の就職格差を広げる懸念もある。
この5年間、高校新卒の求人倍率は全都道府県で1倍を上回り、安定していた。だがリーマン・ショック後の09年度を見ると、東京が5倍を超える一方、0・43倍の沖縄など19道県で1倍を切った。今回同じような現象が起きぬ保証はない。
高卒の就職者は地元志向が強い。信頼関係を築いた近場の企業に、学校推薦で生徒を送り出す。そんな慣行も各地で見られる。しかし今年は勝手が違うところも出てくるだろう。就活を支援する企業や民間団体と連携し、県外に視野を広げることも考えたい。時期を逸さず、自分に適した仕事を見つける大切さは何物にも代え難い。
採用する側も過度な抑制に走らず、長い目で安定的な雇用に努めてほしい。若い力はきっと企業の活力になる。