(社説)石炭火力削減 温暖化防ぐ道筋を描け

社説

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 二酸化炭素(CO2)の排出が多い旧式の石炭火力の発電量を、2030年度までにできるだけ減らす。経済産業省が、そんな方針を決めた。

 国際的に強まる脱石炭の流れを受け、ようやく重い腰を上げる。気候危機の回避に向け、石炭火力への依存をやめ、再生可能エネルギーを広げる一歩としなければならない。

 地球温暖化対策を進めるパリ協定の下、国際社会は今世紀後半にCO2排出の実質ゼロをめざしている。燃料の燃焼などにともなう世界のCO2排出の約3割を占める石炭火力について、欧州を中心に20~30年代の撤退をめざす国が少なくない。

 こうした脱石炭の動きと並行して、太陽光や風力といった再エネが世界規模で広がりつつある。まだ石炭火力の比重が大きい中国やインドなどの主要排出国も例外ではない。

 そんななか日本は、石炭火力を基幹電源とする姿勢を崩していない。再エネの目標も国際的に見劣りする水準にとどまっており、「温暖化対策に後ろ向きだ」と批判されてきた。

 今回の方針は、国内140基の石炭火力のうち効率の悪い114基の旧式施設の発電量を、9割ほど削減することを想定している。再エネの拡大を後押しするため、送電線利用のルールも見直すという。

 「やっと日本が脱石炭にかじを切った」との見方もある。だが、旧式の石炭火力の削減や再エネの主力電源化は、現行のエネルギー基本計画に盛り込まれており、既定の方針が具体的に動き出すだけともいえる。

 むしろ、気がかりなことが多い。「石炭火力26%」「再エネ22~24%」という30年度の電源構成の目標を据え置くほか、高効率の石炭火力の建設や運転は認めるという。石炭に頼る基本姿勢に変わりはないのだ。

 高効率型は旧式よりCO2排出が少ないのは事実だが、それでも天然ガス火力の2倍もある。実質排出ゼロへ身を切るような排出削減に努めるべきいま、これから40年にもわたってCO2を出し続ける発電所を新設するのは理屈に合わない。

 排出量を抜本的に削減するのなら、旧式の石炭火力を高効率型に更新するのではなく、再エネに置き換えていくことこそ求められる。原発もCO2を出さないが、事故のリスクをなくすために将来はゼロをめざす必要がある。それまでに再エネの拡大を急ぐべきだ。

 まずは石炭火力からの撤退とその期限を決め、電源構成を抜本的に見直す。そして、そこへの道筋を具体的に描く。気候危機対策に本腰を入れるのか、安倍政権の姿勢が問われている。

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