(社説)コロナ再拡大 戦略不在が広げる不安

社説

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 東京都新型コロナウイルスの感染者が2日連続で100人以上確認された。周辺の県などでも拡大傾向がみられる。

 小池百合子都知事は「要警戒」としつつも、4~5月のような休業要請などの踏み込んだ措置には慎重な姿勢をみせた。

 たしかに幅広にPCR検査をおこなった結果が、感染者の掘り起こしにつながっている面があるし、多くの人は軽症とされ、いまのところ医療態勢が逼迫(ひっぱく)する状況でもない。日々の数字に一喜一憂せず、まずは一人ひとりが感染防止を心がけることが大切だ。

 とはいえ、漠然とした不安が社会を覆い始めているのは間違いない。都、そして政府から確たる方針や戦略が示されず、説明も不十分で、今後の道筋が一向に見えないためだ。

 たとえば、都は接待を伴う飲食店で感染が広がっていると強調するが、実際は「経路不明」のケースも多数あり、全体の半数近くを占める。この事態にどう対処していく考えなのか。

 PCR検査は1日3千件余りまで可能になった。しかし都の人口1400万人を考えれば依然少ない。政府がクラスター対策強化のカギと位置づける接触アプリも、システムの不具合もあって、「人口の6割が導入」という目標の達成ははるかに遠く、決め手になり得ない。

 休業や外出自粛を要請する指標が短い間に変わったり、要件に達しているのに適用が見送られたりしているのも、不安や不信を広げる原因のひとつだ。

 新たな知見を得れば、それを踏まえて判断基準を見直すのは当然とはいえ、その際には人々が納得できる丁寧な説明が不可欠だ。だが、そこがおろそかになっているため、都合のいいようにゴールポストを動かしている印象が拭えない。

 先月初めに出されて10日間で終了した「東京アラート」も、どんな意義や効果があったのか検証されていない。おとといの知事会見では、感染状況と医療の提供態勢を、専門家が4段階で評価する新たな仕組みが紹介されたが、最も高い警戒レベルになったとき、都はどうするのかはあいまいなままだ。

 透けて見えるのは、再開したばかりの経済活動をとにかく維持したいという思いだ。政府も同様で、「もう誰も、緊急事態宣言とかやりたくないですよ」(西村康稔担当相)と言いながら、ではどうやって感染防止の要請と両立させていくのか、具体策を提示できないでいる。

 どの国も頭を抱える難題ではある。だが市民に対応をゆだねるような姿勢は、責任回避のそしりを免れない。政治の真価が問われる局面である。

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