(社説)民間への委託 統一ルールが必要だ

社説

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 不透明さを批判されている政府事業の民間への委託について、問題の事業を所管する経済産業省が、有識者による改善策の検討を始めた。

 経産省が委託のやり方を見直すのは当然である。しかし委託契約は他の省庁でも行われ、情報公開が不十分なことなど共通する欠点を抱えている。政府は統一的なルールをつくって徹底するべきだ。

 政府の新型コロナウイルス対策には、売り上げが急減した中小企業への持続化給付金(4・3兆円)、家賃支援給付金(2兆円)、旅行や外食などの消費喚起策(1・7兆円)など、巨額の支援策が盛り込まれた。

 役所の人員や能力にも限界があり、制度をつくるのに民間と相談したり、事務を委託したりすることが必要な場合もあるだろう。だが、税金を使う以上、国民に疑念を持たれるやり方は許されない。

 持続化給付金の入札前には、発注した中小企業庁が、広告大手の電通が主導する社団法人の関係者と3回にわたって面会し、この法人が落札した。中企庁の前田泰宏長官は2017年に渡米した際、現在給付金の事務を担当している電通OBの法人理事とパーティーで同席していたことも判明している。癒着を疑われても仕方あるまい。

 一連の問題で浮かび上がったのは、価格だけでなく提案内容なども加味して落札者を決める「総合評価方式」に、透明性が欠けていることだ。

 中企庁は持続化給付金と家賃支援給付金の事務の委託先を決める際、ともに総合評価方式を採用したが、入札の応札額は落札業者の分しか公表していない。提案内容も「企業秘密」を理由に明らかにしていない。

 経産省は今回、業者との事前接触や入札結果の情報開示、再委託のルールの変更などを検討するという。しかし外部有識者を交えて検討するとはいえ、数々の疑念が持たれている経産省が自らつくった改善策に、国民の理解が得られるだろうか。

 06年に財務省がつくった入札をめぐる統一ルールでは、総合評価方式の情報開示は「評価の結果の公表を徹底する」としか書かれていない。政府は、今回の委託契約の問題を全省庁の課題と位置づけ、新たな統一ルールをつくるべきだ。

 家賃支援の事務では、電通の社員が下請け会社に対し、ライバルの広告大手に協力しないよう圧力をかけていたことがわかっている。独占禁止法違反にあたらないか、公正取引委員会は厳正に調べる必要がある。入札の透明性を高めても、多くの業者が自由に競い合わなければ、適正な契約には結びつかない。

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