(社説)2次補正予算 問われるのは実行力だ

社説

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 緊急事態宣言が解除された後にようやく、危機を乗り切るための対策ができた。政府がおととい閣議決定した過去最大となる総額32兆円の今年度2次補正予算案だ。遅きに失したとは言え、一刻も早く支援を国民に届ける必要がある。

 中小企業への最大600万円の家賃補助やひとり親世帯への現金給付、雇用調整助成金の拡充などが盛り込まれた。自治体が独自の休業支援や医療体制の整備に使える交付金も4兆円超積み増した。

 安倍首相は「世界最大の対策で、100年に1度の危機から日本経済を守り抜く」と話す。しかし大事なのは規模ではない。1カ月前に成立した1次補正予算に計上された雇用調整助成金や中小企業などへの融資は、煩雑な書類作成や窓口の混雑などで実施が滞っている。政府は遅れの原因を究明し、申請方法の簡略化などに知恵を絞らねばならない。

 支援策が後手に回ったのは、コロナ禍が早期に収まるという甘い見通しが外れたからだ。同じ過ちを繰り返さぬよう、今から感染拡大の第2波を想定して備えるべきだ。

 合計で57兆円を超える2回の補正は、ほぼ全額を借金でまかなう。政府は今年度の歳入に占める国債の比率が戦後最悪の56・3%になると見込んでいるが、税収の下ぶれで更に悪化するのは確実だ。日本の財政は、第2次世界大戦以来の危機的状況に陥ったと言える。

 国民の命や暮らしを守ることが最優先なのは当然である。「今は財政再建など言っている場合ではない」(西村康稔経済再生相)ことは否定できない。だが、将来世代に回すツケを減らす努力を怠ってはならない。

 コロナ禍は経済や社会の構造を変える。政府は、今後の社会のあるべき姿を見据えて既存の施策を総点検し、予算を抜本的に見直す必要がある。

 治療薬やワクチンが無いなかでは、経済活動の本格化は試行錯誤にならざるをえない。政府は1次補正に計上した旅行やイベントの需要を喚起するキャンペーンを7月下旬に始める方針だが、執行ありきは許されない。本当に事業をできるのか、慎重に見極めるべきだ。

 2次補正では、政府の判断で使途を決められる予備費を10兆円も積み増した。安倍首相は「状況の変化に応じた臨機応変な対応」の必要性を強調するが、巨額の予備費は、憲法が定める財政民主主義の趣旨に反する。実際に使用する際は、事前に与野党に説明し、意見を踏まえて執行することが求められる。コロナ禍を理由にした政策の白紙委任は認められない。

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