(社説)コロナ相談目安 「誤解」では済まされぬ
新型コロナウイルスへの感染を心配する国民にとって、極めて重要な指針である。関係者に「誤解」があったなら、それをただすのが政治や行政の責任だ。今回の改訂を検査の充実に確実につなげねばならない。
感染の有無を調べるPCR検査をめぐり、保健所などに相談する際の目安を厚生労働省が改めた。「37・5度以上の発熱が4日以上続く」という指標をなくし、「軽い風邪症状が続く」場合も対象とした。
発熱が37・5度や4日間に満たないとして、保健所などに相談しても専門外来を案内してもらえない事例が相次いでいた。軽症者が急変する事例も報告されるなか、この指標にまだ達していないとして、問い合わせを控えた人もいたことだろう。軽症者にも広く相談や受診を促す措置は改善に違いない。
一方で、加藤勝信厚生労働相は改訂に先立つ記者会見で、「目安」に過ぎないものが「基準」のように扱われたとして、「我々から見れば誤解だ」と語った。「誤解した側」に問題があると言わんばかりではないか。加藤氏はきのうの衆院予算委員会で、「責任転嫁はしていない」と述べたが、厚生行政のトップとしての自覚を欠いているといわざるをえない。
確かに、厚労省は目安を一律に適用せず、該当しない人でも状況を踏まえて柔軟に判断するよう自治体に重ねて通知していた。しかし、検査態勢や病床が限られるなか、保健所などが目安を事実上の基準として運用せざるを得なかった一面もある。国として十分な支援を行わず、現場の「誤解」というのは不誠実であり、国民を含め「誤解」があるなら、政府はそれを解く努力を尽くすべきだ。
「誤解」発言ははしなくも、今回のコロナ対応で、安倍政権が国民ときちんと意思疎通できていないことをあぶりだした。問題点を指摘されても真摯(しんし)に受け止めず、自らを正当化することに熱心という政権の体質の表れでもあろう。
新しい目安により、相談が増え、保健所の負担がさらに増えることも予想される。電話をかけても一向につながらない、という状況が続くようでは、国民の信頼をさらに失いかねない。その後の医療機関への受診、検査の実施、陽性の場合の入院や療養までの一連のプロセス全体が円滑に進むように、政府は全力をあげねばならない。
自ら旗をふっても、日本のPCR検査の数が増えないことについて、安倍首相は先日の記者会見で「目詰まり」を理由にあげた。その目詰まりの原因を一つひとつ見極め、策を講じることこそ、政治の役割である。
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