(社説)世界株価急落 政策対応の検討を急げ

社説

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、世界各国で株価が急落している。経済の収縮で雇用や生活に悪影響が広がらないよう、政府や日本銀行は対応を検討すべきだ。

 昨日の東京市場では、日経平均株価が前日比1128円安と大幅に値下がりした。日米の株価の下落幅はこの1カ月で約3割に達している。

 新型コロナの世界的流行が確認され、感染者の増加に歯止めがかからず、入国制限などの動きが広がる。国境を越えた人やモノの動きが世界経済の拡大を後押ししてきただけに、混乱の出口は見通せない。不透明さが増す中で、市場参加者が不安を募らせているようだ。

 対策の基本は、急激な感染拡大の抑止だ。流行終息の展望が見えれば、経済も復調が望めるだろう。だが、その道を切り開くためにも、部分的なショックをきっかけに経済全体が悪循環に陥り、社会の力を弱めることは防ぐ必要がある。防疫と経済の維持は車の両輪だ。

 まず金融市場でパニックが広がらないように、政策当局は適切なメッセージを発し、必要な行動をとるべきだ。

 欧州中央銀行は先日の理事会で量的緩和の拡大を決め、米連邦準備制度理事会は緊急利下げに加え、資金供給も増やしている。日銀は長く大規模緩和を続けており、切れるカードは少ないが、資金供給に万全を期すとともに、状況に応じ残る手段を効果的に用いてほしい。

 雇用や所得への打撃を防ぐためには、財政的な手段の役割も重要だ。影響を直接受けた働き手や業界に対する支援の充実が求められる。さらに、経済全体で大きな需要不足が見込まれる局面になれば、財政支出の拡大や税負担の軽減も検討対象になるだろう。

 すでに、観光業や百貨店、運輸関連など、売り上げが急減している分野もでている。加えて新型コロナの流行以前から、米中摩擦消費増税などで日本経済は内外需ともに弱含み、景気の悪化傾向が続いていた。

 一方で、海外から部品が届かずに生産が停滞したり、感染予防のためにイベントや営業を自粛したりといった供給面での制約による縮小もあり、単純な景気後退とはやや様相が異なる。

 どのような財政措置であれば経済の維持・回復に資するのか、具体策を練ることが必要だ。費用対効果を踏まえつつ、所得減を補い消費を支える力がある実効的な方策を、準備しなければならない。

 感染拡大の防止と経済活動の維持のバランスを、とっていけるのか。社会全体の底力が試されている…

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