(社説)全国一斉休校 影響の軽減に全力注げ

社説

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 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、安倍首相が昨夜、全国すべての小中高校などに、3月2日から春休みまでの臨時休校を要請すると表明した。

 学校では、閉じた空間に多人数が密集して長時間を過ごし、食事も共にする。リスクが高い環境であり、子ども経由でお年寄りを含む家族に感染が広がることを心配する声もある。現に多くの感染者が見つかった北海道などは、やむを得ない措置として一斉休校を決め、きのうから順次始まっている。

 とはいえ、首相の表明はあまりに唐突で、かえって混乱と不安を招きかねない。

 現実的なリスクを、どんなデータに基づき、どう判断したのか。文部科学省は25日に、休校にする範囲や期間は、地域の事情に応じて自治体の判断に委ねる内容の通知を出したばかりだが、なぜ急転換したのか。

 首相は、今回の措置に伴って浮上する諸課題には「政府が責任をもって対応する」と約束した。その考えに異論はないが、具体的にどんなことを想定し、いかなる手立てを用意しているのか、説明は一切なかった。国民が納得・安心できる対策をすみやかに示す必要がある。

 全国の学校が1カ月にわたり閉鎖されるとなると、家庭や社会に及ぶ影響は計り知れない。

 とりわけ低学年の子がいる共働き家庭には大きな負荷がかかる。子どもをひとりにしておくわけにはいかない。いままさに感染症と闘っている医療従事者の中にも、欠勤を余儀なくされる人が出るだろう。企業も多くの社員の不在に直面しそうだ。在宅・短時間勤務や時差通勤などを使って、業務への支障をどこまで抑えられるか。

 より厳しい立場に立たされるのは、非正規雇用で働く一人親だ。解雇や収入減を恐れて途方にくれる人も多いに違いない。休校に伴う欠勤・早退などがあっても不利益な扱いをしないよう、行政は早急に事業所への周知を図り、指導しなくてはならない。長期の休業を国が事実上強いることになる以上、子育て中の低所得世帯への生活支援の拡充は必須ではないか。

 おとといの政府の要請後、文化・スポーツのイベントも、中止や縮小、無観客試合への切り替えなどが進んでいる。有効なリスク低減策ではあるが、こうした催しなどの従事者にはアルバイトや非正規雇用の人が多く、ここでも経済的な苦境を訴える声が上がっている。

 社会の安全を保つための措置によって、立場の弱い人ほど大きなしわ寄せを受ける。政府はその程度を少しでも抑える政策を早急に打ち出し、実行に移す責務がある。

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