(社説)政治資金規正 ザル法のままでは困る

社説

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 抜け道が多く、ザル法と批判される政治資金規正法を、このまま放置しておいては、法がめざす政治活動の公明・公正の確保はおぼつかない。資金集めで比重を増す政治資金パーティーの見直しなど、透明度を高める法改正に取り組むべきだ。

 総務省が2018年の政治資金収支報告書を公表した。政党や政治団体の収入総額は前年比2・5%増の1084億円。内訳をみると、寄付が微減だったのに対し、15%増のパーティー収入の伸びが目立つ。

 その理由は容易に想像がつく。寄付の場合、年間5万円を超えると個人や企業の名前を収支報告書に記載しなければならないが、パーティーでは1回につき20万円以下なら公表せずに済むからだ。

 例えば、菅官房長官は12年の就任以来、パーティーの開催が年々増え、18年は計10回で収入は約8100万円。しかし、パーティー券の購入者は、全員が20万円以下だったとして、1人も明らかにしていない。パーティーが匿名での資金提供の温床になっているのが実情だ。

 パーティーには別の抜け道もある。企業・団体による献金は政党に対してしか認められていないのに、パーティー券の購入であれば、政党以外の政治団体からも可能である。また、国の補助金を受けた法人や赤字法人、外国人・外国法人の寄付は禁じられているが、パーティー券の購入に制約はない。

 資金集めという実態に違いはないのに、寄付とパーティー券の購入でこれだけ扱いに差があるのは納得しがたい。少なくとも、公開基準は寄付並みに引き下げる法改正が必要だ。

 見直しの論点はパーティーにとどまらない。政党交付金を導入する代わりに廃止するはずだった企業・団体献金が、政党や政党支部向けに温存されているのはおかしくないか。資金の流れを把握するには、政治家がかかわる複数の政治団体を一つにまとめるべきではないか。収支報告書の保存期間が3年しかないのは、さかのぼった検証を拒むものではないか。

 クラウドファンディングによる資金集めや、暗号資産(仮想通貨)による寄付など、新しい社会の動きにどう対応すべきかも検討課題だろう。

 安倍首相は後援会が主催した「桜を見る会」の前夜祭が、収支報告書に記載されていないことは問題ないと繰り返すが、規正法の趣旨を理解していないと言うほかない。政治活動を「国民の不断の監視と批判」の下に置くことが、この法律の目的である。法の不備を不断に見直し、理念に近づける努力こそが、政治家には求められる。

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