「いずも」ドローン動画はフェイクか 「情報戦」をしかけられた日本

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編集委員・土居貴輝
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 本物か、捏造(ねつぞう)されたフェイクなのか――。海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」をドローンから撮影したとみられる動画がSNSで拡散し、真偽をめぐって「論争」となっている。自衛隊・米軍施設の警備のあり方や、ドローン技術を活用した兵器への対応にも関わってくるこの問題。昨年、インド太平洋を長期航海したいずもに同乗取材した内容を踏まえ、今回拡散した動画が日本の防衛態勢に突きつけた課題を検証する。

 問題の動画は約20秒間。海自横須賀基地神奈川県横須賀市)に停泊中のいずもに、ドローンが飛行甲板の後方から近づき、甲板上を低空で艦首に向けて飛行しながら撮影したとみられる様子が収められている。

 左上には中国の大手動画共有サイト「bilibili(ビリビリ)」のロゴマークが記されている。3月下旬からSNS上で確認されるようになった。

 国内では、小型無人機等飛行禁止法に基づき、対象防衛関係施設の上空で管理者の同意を得ずにドローンを飛ばすことが禁止されており、自衛隊や米軍の横須賀基地も対象となっている。

 木原稔防衛相は4月2日午前の記者会見で「悪意をもって加工、捏造されたものである可能性を含めて現在分析中だ」と発言。生成AI(人工知能)によって捏造された「フェイク動画」の可能性を示唆した。

 一方、海自トップの酒井良海上幕僚長は同日午後の記者会見で「判断しようがない。不自然な点もあると思うが、完全にフェイクだというほどのエビデンスを持ち合わせていないので、私としては判断しかねる」と述べた。「大臣の会見より、若干、トーンを落とした言いぶり」(防衛省幹部)となった。

 実際に動画を見ると、いずもの後方、艦尾側から低空で近づき、飛行甲板上を飛行しながら、艦首方面に進んでいく様子が収められている。

 いずもが停泊している岸壁の右側には、海自横須賀地方総監部の庁舎が見える。艦首の前方には米海軍横須賀基地の施設も並び、停泊している潜水艦やイージス艦なども確認できる。

 さらに、その後方には、京浜急行・汐入駅近くのホテルやヴェルニー公園も見え、この一帯の建物や施設の配置と一致している。

番号「83」がよく見えないから本物なのか?

 動画の真偽をめぐって「論争」になっているのは、艦番号だ。

 動画では、飛行甲板の艦尾に掲げられた自衛艦旗の横に数字を確認できる。本来なら、いずもの艦番号である「83」と記されているはずだが、「8」のみが薄く見えて、「3」は識別できない状態だ。

 SNS上では、この「83」の「3」が見えていないことを根拠に、「動画の信頼性は高い」という主張がみられる。

 どういうことなのか。

 「空母化」される護衛艦いず…

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    マライ・メントライン
    (よろず物書き業・翻訳家)
    2024年5月7日7時47分 投稿
    【視点】

    「反応すれば相手の思うツボ」というのはネットの誹謗中傷と同じで、特定の状況下では正しいが、逆に野放し姿勢が明確化するとむしろマズい展開を呼ぶだろう。 結局のところ、ある程度オタク的な観点に踏み込みながら重要性の優先順位に沿って「可能性」を紹

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