(社説)日本とインド 息長く互恵関係めざせ

社説

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 安倍政権がインドとの関係づくりに力を入れている。先週、外務と防衛の両閣僚が互いにそろう、2プラス2と呼ばれる会合が初めて開かれた。

 日本はこれまで米国、豪州、ロシア、フランス、英国、インドネシアと開いており、インドが7カ国目。外交的な接近を内外に印象づける狙いがある。

 今回のニューデリーでの初会合では、自衛隊とインド軍との間で物資を融通しあう協定づくりを早期にめざすことに加え、戦闘機の共同訓練を日本で行う計画でも合意した。

 成長大国インドと対話し、信頼を醸すのは有意義なことだ。ただ、その歩みを進めるうえでは、中長期の時間軸を見すえ、健全な国際秩序を築く大局観を念頭に置くべきだろう。

 日米は「自由で開かれたインド太平洋」構想を掲げている。重要な海上交通路の安全を確保しつつ、アジアの経済的発展を見込んだビジョンとされる。

 だが一方で、中国の「一帯一路」構想への対抗策だとの見方も根強くある。日本の対印接近も、対中牽制(けんせい)の一環として見られるならば、アジアの平和と繁栄の土台づくりの役割を果たすことはむずかしくなる。

 その意味で、新たな日印関係が軍事的な協力で強調されるのは不適切だろう。アジアでの日本の貢献を象徴するように、インフラ開発や経済交流、災害・環境対策など総合的な互恵をめざす姿勢を発信するべきだ。

 インドは伝統的に「非同盟」を旨とし、多角的な外交を志向する国である。中国が主導するアジア開発の国際銀行に参加する一方、日中韓やASEANなどの自由貿易圏構想からは撤退する考えを最近示した。

 インドにはまだ、貿易赤字やインフラ整備など難題が多い。日米中の思惑がどうあれ、国内と近隣関係に力を注ぐ傾向が、今後もしばらく続くだろう。

 そうした事情はミャンマーなど周辺国も共有しており、この地域でこれからどんな秩序が形成されるか視界は開けない。日本は米中の覇権争いから一線を画し、アジア諸国の発展を実現する堅実なパートナーとしての地位を固めていきたい。

 インドのモディ政権で懸念されるのは強権的な政治である。パキスタン領有権を争うジャム・カシミール州についてはこの夏、自治権を剥奪(はくだつ)し、国際的な批判を招いた。

 安倍首相は今月、インドを訪れてモディ氏と会う。その際、核廃絶をめざす日本の立場とともに、あらゆる紛争の平和的な解決を真剣に説くべきだ。「自由で開かれたインド太平洋」の原則は、あくまで「法の支配」を貫くことが肝要である。

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