(書評)『マリアさま』 いしいしんじ〈著〉

有料記事書評

 ■見えないものたちの声を聞く

 「いしいしんじ祭」に参加したことがある。神奈川の漁港、三崎でのことだ。かつてここに住んでいた彼の名を冠したこの祭りで、神社の神楽殿の扉が突然開かれ、中に彼が座っている。机に向かった彼は、その場で小説を書き始める。

 湧き上がる物語は彼の声となって流れ、境内の観客たち…

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