(社説)関電首脳辞任 経営を一新できるのか

社説

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 厳しい批判にさらされての、経営首脳らの辞任である。しかし、原発事業に伴う根深い癒着を一掃し、企業統治の不在をただすことができるのか、その見通しがたったとは言えない。

 関西電力の八木誠会長と原子力事業本部にかかわった4人の役員らが辞任し、岩根茂樹社長も辞任の意向を表明した。高浜原発がある福井県高浜町の元助役から巨額の金品を受け取っていた問題で責任をとった。

 金貨や商品券などを受領していた八木氏は、問題発覚の直後は「個人的なこと」として説明を拒んだ。その後、1年前にまとめていた社内調査報告書を公表しつつ記者会見に応じたが、引責辞任は否定していた。

 社会の常識とのズレに、改めて驚く。受け取りを強く迫る元助役に対して断れなかったと関電は強調するが、そんな説明は通らない。他の役員も含めて辞任は当然だ。

 しかし、今回の問題は一部役員の引責で済む話ではない。

 関電や子会社の幹部を務めている他の受領者の進退はどうなったのか。昨年の社内調査の内容が取締役会に報告されず、八木、岩根両氏らの処分も取締役会にはからずに実施された問題に誰がどう関与し、責任を取るべきなのか。社内の役員だけで調査に関する情報を共有するなど隠蔽(いんぺい)をうかがわせる動きも見られるだけに、事態は深刻だ。

 そして、監査役である。昨年秋に社内調査について把握しながら動かず、放置した。取締役会を監視する役割を果たさなかったのに、責任を問わないのは解せない。

 関電は、第三者からなる新たな調査委員会を設置した。委員会は、元助役からの金品受領の全容をはじめ、全部門にわたって類似事例の有無、関電側の対応などを検証する方針だ。

 社内調査では20人が3億2千万円相当の金品を受け取っていたことがわかったが、原発関連の役員らを対象に一部の期間について調べただけだ。1990年代や原発部門以外での受け取り、元助役を通じてではなく業者からの直接受領などが次々と明らかになっており、問題は広がるばかりだ。

 関電は地元の土木建築会社の顧問だった元助役に対し、発注予定の工事の概要を前倒しで伝えていた。ほかにも関電側からの不明朗な対応や資金の流れがないか、第三者委には全ての事業について癒着の有無や実態を解明することが求められる。

 岩根社長は、第三者委の調査がまとまるまで続投する。「歴史をさかのぼる、かなり根深い」問題を根絶し、企業体質と経営の刷新へ道筋をつけられるか。決意と実行が問われる。

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