(社説)相次ぐ台風 教訓生かして備えよう

社説

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 今年最強クラスの勢力をもつ台風19号が日本列島に近づいている。千葉県などに被害をもたらした15号を上回る猛烈な台風に発達していて、12日からの3連休に最接近する見込みだ。イベントの中止・延期など早めの判断を心がけ、万全の備えで影響を最小限に抑えたい。

 15号の直撃から1カ月しか経っていない。地球温暖化の影響などで海水温が上昇し、これまでに例のない強さの台風が襲うリスクは高まっている。

 1カ月前のことを思い起こす。鉄道各社は早々に計画運休を決めたが、予定通りに運転を再開できず、混乱を招いた。倒木被害に対する見通しの甘さ、情報の寸断、停電の復旧の遅れなどが生活を直撃した。

 教訓を生かし、自治体やライフラインに関係する企業・施設は、正確な情報の把握と発信、適切な人員配置に努めてもらいたい。住民の側も気象情報をこまめにチェックするのは言うまでもない。必要に応じて、親類や知人宅に身を寄せたり、避難所に早めに移動したりして身を守ってほしい。

 安倍首相は、台風15号への対応は「迅速・適切に行われた」と繰り返す。だが、実態把握や自治体支援に課題が残ったのはまぎれもない事実だ。真摯(しんし)な姿勢で向き合い、反省すべきは反省する。その積み重ねが次の被害を防ぐのではないか。

 15号の被災地の生活再建はまだ見通せない。背景に、農林漁業に共通する担い手の高齢化と後継者難、そして建設労働者の深刻な人手不足がある。

 家屋被害は千葉、神奈川などで4万棟を超す。9割を占める一部損壊家屋について、政府は修理費の補助を決めた。ところが肝心の瓦職人が足りず、工事まで数カ月待ちとの声も聞く。

 農業も大きなダメージを受けたが、千葉県内の被害額約411億円の半分以上は、ビニールハウスが壊れるなどした施設被害だ。ここでも、倒れたハウスを撤去する手が足りず、復旧を阻む原因になっている。

 昨年の西日本豪雨北海道地震でも、家屋の解体・修繕・建設にあたる業者の不足が指摘され、いまも解消されていない。現場に余裕がなく、非常時の対応力が弱まっている現実が浮き彫りになった格好だ。

 相次ぐ災害は人手不足に拍車をかけ、復旧のスピードを落とし、地域を疲弊させる。少子高齢時代に入った災害列島が抱える構造的な問題といえよう。

 解決は容易でないが、官民で被災状況を共有し、必要な人材を探したり、現地に派遣したりする仕組みの充実強化が欠かせない。時代の変化に対応した防災政策の見直しが求められる。

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