(フォーラム)居場所、きっとあるよ

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 ■#withyou~きみとともに~

 新学期が不安な10代の皆さん、不安な気持ちを支えてくれる「居場所」はありますか。家? 塾? 友達? 本の世界?――。「ないよ」という人もいるかもしれません。「居場所」ってなんだろう。みんなで考えてみませんか。

 ■「誰かに話し、発信して」 不登校経験者たちがイベント

 つらい時、学校に行けない時はどうしてる? どうしてた? 体験や気持ちをツイッターで伝え合うトークライブ「#わたしの居場所」が夏休みの時期が終わる8月26日夜、行われました。不登校経験のある3人が、東京都中央区のツイッタージャパン本社内のスタジオから「悩んでいるのは一人だけではないよ」とメッセージを発信しました。

 朝日新聞withnewsと日本財団の共催。多くの10代にとってツイッターが本音を打ち明けられる場となっていることから、コラボしました。出演したのは「不登校新聞」編集長の石井志昂(しこう)さん(37)、俳優で漫画「不登校ガール」をネットで配信する園山千尋さん(29)、モデルで俳優のゆうたろうさん(21)。朝日新聞の金沢ひかり記者を進行役に90分間、ツイートを紹介し、語り合いました。

 トークは「わたしの居場所」をテーマに、それぞれの中学時代の不登校からスタート。私立受験に落ちて公立中に進んだ石井さんは挫折感が続き、「失敗したのも全部自分のせいと思って、どんどん苦しくなった」。ゆうたろうさんは中1の後半、「なぜ1日8時間も学校に?」「友達を作りたいわけでも、勉強をしたいわけでもない」と考え、学校に通う理由が見いだせなくなりました。

 園山さんは転校先で友人関係につまずきました。同級生に「あの子が嫌い」と言われても共感できず、しんどくなった。「体が動かず、学校にたどりつけなかった」と振り返りました。

 「#わたしの居場所」で呼びかけたツイートも紹介。「一番信頼出来る友達の所だと思う」「音楽です。その世界に閉じこもって居られる」などの投稿がありました。

 最後に3人は視聴者へのメッセージを書きました。ゆうたろうさんは「みんな発信者」。自らもSNSでファッションの投稿をするうちに「いいね」が集まり、勇気づけられた。「誰かに話すことは大事。追い込まずに発信して」と。園山さんは「今の自分をあきらめない」。高校に進んで将来の夢が見つかって楽になった経験を踏まえ、「つらいときは耐えて。新しい道が開ける」と呼びかけました。

 中継は最大約3700人が同時に視聴。90分間の総視聴者は約25万人に及びました。録画はwithnewsのツイッターアカウント(@withnewsjp)で見ることができます。金子元希

 ■自室で好きな音楽/塾が救い

 「#わたしの居場所」でツイッターに投稿された言葉から。

       ◇

 ●わたしの居場所は自室でした。学校や部活、何もかもから遮断され、自室なのでとにかく好きなものがありました。ずっと好きな音楽をかけ、好きな本を見て、心を落ち着かせていました。

 ●ついったー なんにも飾らなくていいし変に気を使う必要も無い ここは基本壁打ちやからたのしい。

 ●高校のときなかったですね。夏は地獄でした。ひたすら読書をしてました。いまなら言えますが、無駄な我慢でした。逃げられるなら逃げた方がいい。

 ●中学校になじめなかった私にとっては塾と自然学校が救いだったな。他校や年の違う友だちを持つのは大事。場所が変われば必要としてもらえたり、自己肯定感を持つチャンスもあったりする。

 ●小さい頃誰とも仲良くできるけど「唯一無二の親友」という人はいなく、決まったグループもなかった私。絶対的わたしの居場所は「家族の中」。その基地がある安心感は何にも替え難い!

 ●インターネットがあったから、世界は私の知るよりずっとずっと広いって知ることができた。だからつらいこと苦しいことたくさんあるけど、今もなんとか生きていられています。

 ●私の居場所は自分と音楽でした。自分しか慰めてくれる人がいなくて、ずっと音楽を聴きながら泣いていました。ずっと自問自答を繰り返してました。今では音楽だけが私を支えてくれています。

 ●無理に集団の中に居場所を見つけなくていいと気づきました。今までは学校が全てで、学校の中に居場所を見つけなきゃって思っていました。今は、不登校になって、ネットで同じような境遇の人や、自分の部屋で読んだ本のおかげで、自分らしくいられる気がします。

 ●私の居場所は友達でした。いじめとまではいかなかったけど周りからの嫌な視線が多くて行きたくないって悩んでた時があったけど大好きな友達と遊ぶことで中学校は乗り越えてました。

 ■焦らないで、休めばいい モデル・よしあきさん

 現役の高校生で、モデルとしても活躍するよしあきさん(19)。インスタグラムのフォロワー数は約34万人で、若い世代から支持されています。ブレークのきっかけは、マツコ・デラックスさんが出演する番組「マツコ会議」(日本テレビ系)の街頭インタビューでした。「友だちが一人もいない」と堂々と言い切る当時14歳のよしあきさんを、マツコさんは大絶賛。よしあきさんは、実は不登校だったと明かします。

       ◇

 小学4年生から不登校で、あの放送のときも学校に通っていませんでした。友だちはほしかったけど、出会いがないからいなかったんです。

 きっかけは小学校の合併でした。一緒になった学校の子となじめなかった。でも、家族が悲しむと思って「学校がつらい」って言えませんでした。周りの人のことを考えすぎていたんです。それが蓄積して、学校に行けなくなってしまいました。

 それから2年くらいは家に引きこもっていました。その頃は毎日泣いてて、「独房よりもきつい」って思っていました。でも、お母さんが「つらかったら休みなさい」って言ってくれたことで、すごく安心しました。

 しばらくして、フリースクールに通い始めました。勉強を教えてくれたり、勉強に疲れたら公園に行ったり。そこで人と接していって、高校に行けるまでになったんです。リハビリみたいな感じですよね。

 でも、僕もすぐに変われたわけではなくて、「ポイント集め」みたいな感じでした。例えば、夜更かしせずに早起きしたら「1ポイント」。外出できたら「1ポイント」。フリースクールに行けたら「10ポイント」。ちょっとずつちょっとずつ、2年くらいかけてゆっくりポイントをためていったんです。できたことを自分で認めてあげて、それが自信につながりました。「どかーん!」と変わることはないです。だから、焦らなくていいと思います。

 僕、いつも嫌なことがあったら、「何事も絶対終わる」って思っています。不登校になったときは、絶対普通の生活に戻れないと思っていました。これ、口では説明できないくらい、僕の中で「絶対」だったんです。でもここまで戻れたんで、本当に今だから言えるんですけど、「どうにでもなる」って思うんです。

 だから、「マツコ会議」で元気に「友だちがいない」って言っていたけど、「今はいない」っていう思いでした。「友だちはこれからできる」って。

 マツコさんに「周りがついていけてないだけよ」って言われたのがすごくうれしかったです。「僕は間違いじゃなかったんだ」って。みんながいつか僕についてくるから、つらいのは今だけ。やっぱり何事も絶対終わるんです。

 だから、焦らないで、自分は間違いだと思わないで。「絶対なんとかなる」って僕は伝えたいです。

 (聞き手・野口みな子)

 ■「不登校」言いかえませんか 制服向上委員会・橋本美香さん募る

 「不登校」に替わる新ネーミングを作り、学校に行かないことを選んだ子どもたちを守りたい。社会派アイドルグループ「制服向上委員会」会長の橋本美香さん(39)は、そんな思いからアイデアを募りイベントを企画しています。思いを聞きました。

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 集団の中にいることが好きな人もいれば、苦手な人もいます。私の身近にも、集団が苦手で学校に行かないという選択をした人がいますが、「『不登校』と言われるのは嫌だった」といいます。マイナスイメージのある言葉で、苦しい思いをしている子たちを、いっそう追い詰めてしまうように感じてきました。

 いろいろな学び方があっていいし、苦しい状況から自分を守るために、登校しないという選択をした子や家族には、その選択をポジティブにとらえてほしい。そんな思いで、今年の春から新しいネーミングのアイデアを募り始めました。

 学校で大勢で学ぶ集団型学習に対し、個人のペースで勉強する「個別型学習」、家で学ぶ「自学生」、家やカフェなど、その時その時の必要性や気分に応じて働く場所を選ぶノマドワーカーになぞらえた「スクールノマド」……。様々なアイデアや体験談を寄せていただきました。

 私自身は、学校に行かない時期はありませんでしたが、小中学校では、女子グループの中で避けられてしまった経験があります。このままでは嫌だと思った私は、中学1年のある日、6人くらいいたグループの子たちに「こんなふうに私を避けるなら、あなたたちと一緒にいたくない」と告げました。結局、他の子たちと仲良くするようになりました。

 当時の私よりもっとつらい状況だったり、いろいろな事情があって気持ちを言えなかったりする子もいると思います。そういう子に、「負けないで」とは言えません。自分を守るために「学校に行かない」という選択をした子は、自分をほめてあげてほしい。だからこそ、「不登校」に替わるポジティブな言葉を考え、広めたいと思っています。

 同時に、言葉を替えるだけでは不十分だと考えています。経済的な負担が小さいかたちで、自分で学んだり、いろいろな経験を積んだりできる選択肢を増やすことが必要です。

 今ではネットでも、画面越しに顔を合わせながらコミュニケーションがとれます。学校に行くのは苦手でも、オンライン授業など、自分に合った学習スタイルを自由に選べる環境が整うように、私にできることを探していきたいと思っています。

 (聞き手・三島あずさ)

       ◇

 新ネーミングは、10月18日に東京都小平市でのイベントで発表予定。詳細は、制服向上委員会オフィシャルHP(http://www.idol-japan-records.net/ski/別ウインドウで開きます)にあります。

 ◇居場所とは、リアルで絶対的なものとは限りません。例えば、日常のささいな感覚でも、積み重なれば居場所になり得ます。ただ、しんどいさなかにいる10代には、その感覚を認識すること自体が難しいことでしょう。

 実際、ライブ配信中に寄せられた声の中には「ない」「これから見つかるかな」といったものがありました。その声を全力で肯定しつつ思ったのは、しんどい時期を過ごした大人が、当時の居場所を振り返り発信することが、つらさを抱える10代に「わずかなものでも、自分を支え得るのかもしれない」と気付くきっかけになるのかもしれないということです。そんな寄り添い方があってもいいと思いました。(金沢ひかり)

 ◇来週8日は「子どもアドボカシー」を掲載します。

 ◇「eスポーツ」と「幼児教育・保育無償化」の二つのアンケートをhttps://www.asahi.com/opinion/forumで実施中です。ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするへ。

 

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