パリで「你好」と絡む白人に反論 アジア系をひとくくりにさせない

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パリ=宋光祐

【連載】インビジブル・マイノリティー フランスのリアル 第3回

【連載】インビジブル・マイノリティー フランスのリアル 第3回

 移民の国フランスで、アジア系市民が差別に声を上げ始めています。「インビジブル・マイノリティー」(見えない少数派)と呼ばれてきた人たちはなぜ立ち上がったのか。フランスで見過ごされてきたアジア系差別の問題から、日本にもつながる多様性のあり方について考えます。

 「你好(ニーハオ)、你好」。7年前、旅行でパリを訪れて幼い息子と市バスに乗っている時だった。自分たちを見た目だけで中国人だと決めつけて、バカにしたような口調でしつこく絡んでくる中年の白人女性に、早川美也子さんは腹が立った。

 外国で日本人が、中国人と決めつけられる経験は珍しくない。早川さん自身、過去に同じ経験をしたこともある。

 日本からパリに渡って博士号を取得した後、日本文化を教える教員として南仏の大学に赴任。今はベルギーのブリュッセル自由大学で研究者として働く。「本当にやめて欲しい」。フランスで暮らして10年以上経つ今でも、アジア系の女性を標的にしたとしか思えない差別を体験し、何度もそんな気持ちにさせられてきた。

 アジアの人たちを中国人とひとくくりにする風潮もその一つ。ただ、差別だと感じても、当時はやり過ごすようにしていた。

 しかし、その日は違った。息子の前で、何ごともなかったかのように済ませてはいけないと思ったからだ。「私は中国人ではない。あなたの態度は差別だ」。意を決して伝えると、女性が反論してきた。早川さんも言い返して口論になった。

 自分たち親子の前に座っていた北アフリカ系のルーツを持つとみられる女性2人が「ひどいのはあなただ」と自分たちの味方になって、その白人女性を注意してくれた。車内がざわつき始めた時、バスが突然止まった。

 「やり取りを聞いていたが…

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この記事を書いた人
宋光祐
パリ支局長
専門・関心分野
人権、多様性、格差、平和、外交
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    BossB
    (天文物理学者・信州大准教授)
    2025年5月5日11時0分 投稿
    【視点】

    自分がマイノリティになった時、マジョリティの目で判断される、差別されることもある。しかし自分がマジョリティの側に戻ると、周りのマジョリティがその社会におけるマイノリティを同じように判断し、差別していることに気づく。そして、マイノリティは自分

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    太田啓子
    (弁護士)
    2025年5月10日20時30分 投稿
    【視点】

    差別とはどういうことなのかの認識を深める、とても有意義な調査であり、日本の新聞記事で取り上げられる意義も大きい。 実際には差別的言動を経験しているはずなのにそう認識しない人の「日本人だから差別されるわけがない」という思い込みや、「差別され

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