日本学術会議改革、どこに問題が 元会長が懸念する「政治への忖度」
日本学術会議を特殊法人化する政府の法案に対する賛否など、学術会議としての態度を決める総会が15日に結論を出す。法案に対しては、歴代会長6人が反対声明を石破茂首相宛てに連名で出すなど、大きな反発を招いている。なにが問題なのか。声明に名を連ねた元会長の1人、広渡(ひろわたり)清吾・東京大名誉教授に聞いた。
――政府は学術会議の「独立性を徹底的に担保する」とうたい、今国会に提出された法案には国の責務として「自主性および自律性に常に配慮しなければならない」と書かれています。しかし学者らは声明で「独立性が高まるかのような説明は、法案の内容から乖離(かいり)した詭弁(きべん)にすぎない」と批判しています。なぜ、反対意見があるのですか。
「これまでは、首相は会員について形式的な任命権しか持たなかった。しかし法案が通れば、評価委員会や監事などの新たなしくみが設けられ、学術会議全体を首相が監督できる制度に変わることになります」
「今までの学術会議は、幹事会があり、会長と副会長のほか研究分野ごとに三つの部から選ばれる部長や副部長らがメンバーでした。また、210人の会員に加えて約2千人の連携会員を任命し、幅広い活動ができるようになっていました」
「しかし法案では、幹事会や連携会員制度が否定され、役員会だけのトップダウン型の組織に作りかえられます。自治的な運営のあり方を解体し、首相の監督下に置くことで政府の方針に沿った政策提言を行う組織に変わってしまいます」
政府の法制化案は「批判そらし」
――なぜ政府はいま、学術会議の組織を変えようとしているのでしょうか。
「2020年に当時の菅義偉…