アプリ長く使うと料金上がる? 「殺熟」生むアルゴリズムに挑む市民

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北京=斎藤徳彦
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 北京市内の40代の会社員女性はよく、ライドシェアのタクシーを使う。スマホの配車アプリで車を呼ぶことができ、料金次第で高級車や大型車なども選べる。市民の足として定着して久しい。

 ある時、同じオフィス地区に通う友人とその料金の話題になり、気づいた。同じアプリで同じ目的地を選んでも、画面に表示される料金が違う。「自転車通勤でほとんどタクシーは使わない」という友人の方が、明らかに安い。職場から市内の首都空港へ行く場合、車種によっては28元(約560円)の差があった。

 小売総額のおよそ半分がネット経由で売れてゆく中国。スマホを使った買い物は、中国の消費生活そのものだ。だが、その画面上で表示される値段が、必ずしも誰にも平等な「一物一価」ではないことに、数年前から人々が気づき始めた。

【前回はこちら】先鋭化する中国ネット世論「愛国流量」のせい? 対日印象にも影響か

受験や結婚といった人生の転機や、経済やライフスタイルの変化を、中国の人びとはワンフレーズの漢字で巧みに表現しています。そんな新語・流行語が映し出す、中国社会のいまを読み解きます。

 日常の買い物や多種多様なサブスクリプション(購読)、航空券代や映画チケット代に至るまで、自分が買う料金が他人と違うことがある。

 日本でも航空券代やホテル代で、すいている時に価格が安くなるといった「ダイナミックプライシング」は導入されている。よく使う客を優遇する仕組みもある。

 ただ、中国の場合、それとはまた異なる。

不利益(殺)を被るのは

 「殺熟」。「熟」はこの場合…

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この記事を書いた人
斎藤徳彦
中国総局長
専門・関心分野
国際経済、中国の経済・政治
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    河野有理
    (法政大学法学部教授)
    2025年4月14日11時56分 投稿
    【視点】

    「殺熟」は「常連客殺し」とでも訳せるだろうか、とても面白い記事だった。舞台は中国だが、これは程度の差はあれ世界的な現象で、GAFAに依存している我々も全く無縁ではない明日の姿だろう。 資本の論理で考えれば、最初はごく安価にサービスを提供して

    …続きを読む
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    綿野恵太
    (文筆家)
    2025年4月14日15時34分 投稿
    【視点】

     「プラットフォーム企業がアルゴリズムで顧客によって値段を変える」というのは恐ろしいと思う反面、いろいろ応用可能のように思います。たとえば、所得が少ない人には生活必需品の値段を安くして、所得が多い人ほど値段を高くするなど自動化可能です。支援

    …続きを読む