今こそ重要な「等身大の情報」 ガザのマンスールさんを失った意味

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上地一姫 後藤遼太
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 パレスチナ自治区ガザで、戦場の実態を伝えてきた朝日新聞の現地通信員、ムハンマド・マンスールさん(29)の命が奪われた。イスラエル軍の苛烈(かれつ)な攻撃を記録し、戦時下の市民の声を拾い、日本の人々に伝えてきたマンスールさん。その果たした役割の重さとは。

 マンスールさんは大学でメディア学を専攻し、2023年10月から朝日新聞の通信員となった。ガザでの海外メディアの取材をイスラエルが排除する中、現地の状況を朝日新聞を通して日本に伝えてきた。

 ガザで30年以上の取材歴があるジャーナリストの土井敏邦さんは、「現地の人々の等身大の苦しみや絶望をすくい上げてきたマンスールさんの仕事は、いま一番ガザで必要な報道。敬意を抱いて見てきた」という。

 土井さんは「ガザに限らず世界中の紛争地域で、本来ならマンスールさんがやった仕事を日本人記者もやらなければいけない。日本社会の空気、社会常識、理解度などを肌感覚で分かる日本人記者が、現地で取材してこそ伝えられる情報がある」と言う。しかし、戦場など危険な場所で取材することが、日本メディアにとって一層難しくなっていると土井さんは感じている。「日本人がわざわざ戦場まで行く必要はない。(海外メディアの)BBCやCNNを見ればいい」といった世間の空気が強まり、加えてメディア企業の経営状況は以前より悪化し、海外に多くの特派員を配置する余裕がない。

経営悪化で特派員減

 「世論もメディアの姿勢も…

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この記事を書いた人
上地一姫
東京社会部
専門・関心分野
沖縄・平和
後藤遼太
東京社会部|メディア・平和担当
専門・関心分野
日本近現代史、平和、戦争、憲法
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    村山祐介
    (ジャーナリスト)
    2025年3月26日23時18分 投稿
    【視点】

    マンスールさんのルポを読むたびに、当事者だからこそ描ける世界があることを感じさせられました。熾烈な空爆の中、自らも家族を連れて逃げまどうガザ住民だからこその思い、見える景色、託された言葉。数千、数万と増えていく死者の数字に麻痺しがちなガザの

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    江川紹子
    (ジャーナリスト・神奈川大学特任教授)
    2025年3月27日15時17分 投稿
    【視点】

     ジャーナリズムの一隅にいる者として、マンスールさんとご家族を悼み、彼らを殺害したイスラエル軍と同国政府に強く抗議します。  国際NPO「ジャーナリスト保護委員会(CPJ)」によれば、2023年10月にガザで戦闘が始まって以降、ジャーナリス

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イスラエル・パレスチナ問題

イスラエル・パレスチナ問題

イスラム組織ハマスが2023年10月7日、イスラエルに大規模攻撃を行いました。イスラエルは報復としてハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ地区に攻撃を始めました。最新のニュースや解説をお届けします。[もっと見る]