インサイダー取引をやめられなかった…元裁判官が明かした「執着心」

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野間あり葉
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 元裁判官の佐藤壮一郎被告(32)は3月26日、かつての職場だった法廷で、被告として判決の言い渡しを受けた。問われたのは、金融庁への出向中に繰り返した株のインサイダー取引。罪を裁く立場から裁かれる側へ、法曹人生はなぜ暗転したのか――。

「無職です」

 3月19日、東京地裁での初公判。証言台に立った元裁判官の佐藤被告は、職業を尋ねられると、淡々とした口調で「無職です」と答えた。

 金融庁への出向直後から約半年にわたり未公開の株式公開買い付け(TOB)の情報をもとに計10銘柄の株を1万1800株、約950万円で購入したという起訴内容については、「間違いありません」と認めた。

 冒頭陳述や被告人質問から、インサイダー取引を繰り返した経緯をたどる。

 裁判官に任官したのは2019年。判事補として大阪地裁那覇地裁を経て、24年4月に金融庁へ企業開示課課長補佐として出向した。

 被告人質問の冒頭、弁護人から裁判官としてのキャリアを問われ、「人間関係に恵まれ仕事を勤め上げたという意味では順調だった」と答えた。

 出向した金融庁では、企業がTOBを実施する際に必要な書類の事前審査が業務。一般的に株価が上がるとされるTOBを公表前に知ることができる立場だった。

 未公表のTOB情報をもとに最初に買い付けをしたのは、出向から間もない24年4月17日。

 弁護人「インサイダー取引を始めたきっかけは」

違法性の認識「あった」

 被告「1銘柄目は興味・関心…

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