教室から社会へ、皆を豊かにする「特別扱いの逆説」 東畑開人さん

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東畑開人さんの「社会季評」

 「面白いんだよ、みんなが豊かになるんだ」

 スクールカウンセラーをしている友人と話をしているときに、「特別扱い」の話になった。大人の社会だとピリピリし、ハラハラするテーマなのだけど、子どもの社会では少しばかり違うらしい。

 ある小学校のあるクラスに、授業中に立ち、歩き、のべつ幕なしにおしゃべりをし、周囲にちょっかいを出し続ける男の子がいた。授業にならない。担任も困っていたし、クラスの子どもたちも困っていた。そこで、友人も含めた教職員で対策会議がもたれた。

 なんらかの特性もあり、落ち着かないのは理解できる。でも、どうしたらいいのか、良いアイデアは出なかった。すると、担任が冗談を言った。「いっそ先生になってもらいますか?」

 みんな笑って、空気が和んだ。ただ、友人は本質的なアイデアだと思った。「確かに先生って、授業中ずっと立って歩いてるし、しゃべってるし、子どもに話しかけてますよね」。この言葉に担任は思うところがあるようだった。「……ほんとですね、ちょっと考えてみます」

 ある日、男の子は担任補佐の役を仰せつかった。特別扱いでミニ先生になったのだ。みんなの前に立ち、プリントを配り、黒板を消す。ときに問題を解き、児童を当てた。担任にツッコミを入れたり、入れられたりした。

 授業は掛け合い漫才のように…

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    武田緑
    (学校DE&Iコンサルタント)
    2025年3月20日8時10分 投稿
    【視点】

    ものすごく面白くて、示唆的な話。本当に読めてよかったです。 おそらく冗談として飛び出たアイデアに、東畑さんのご友人のSCさん、そして担任の先生が踏みとどまったことで生まれた豊かさ。そしてその後のクラスの変化。 「ケアとは資源からの引き算で

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    雨宮処凛
    (作家・反貧困活動家)
    2025年3月20日16時15分 投稿
    【視点】

    むちゃくちゃ面白い視点に唸りまくり、鮮やかに世界が変わったような爽快感に包まれました。 そうなんですよね、誰かをずるいと思う人は、いろんな苦境を抱えているのですよね。 この十数年ほどの、生活保護バッシングをはじめとした「公的ケアの対象となる

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