第3回津波後の海の底 「捜しても、捜しても…」 死亡届を前に夫は迷った

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編集委員・石橋英昭

【連載】ミッシング 震災行方不明2500余人の現実

東日本大震災では、全犠牲者の14%を占める2500人余りの人が、行方不明のままです。津波災害は遺体を見つけることすら難しい、恐ろしい災害でした。いまも大切な家族を待ち続ける人、捜し続ける人がいます。

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 「死亡届」

 机に広げたA3判の用紙を前に、気持ちは行きつ戻りつを繰り返した。

 これを出せば、妻とのつながりが本当に切れてしまうんじゃないか。いや、単なる事務手続きと思えばいいんだ。

 妻がいなくなった2011年3月11日から、1年2カ月が過ぎた12年5月。書類を整えた後も、数日間ためらった。

 ようやく役場に足を向けた。

 宮城県女川町の高松康雄さん(68)は、いまも妻の祐子さん(当時47)が行方不明だ。当時、七十七銀行女川支店で働き、2階建ての建物から避難できないまま、屋上で津波にのまれた。

 翌日からあちこちの避難所を捜した。きっとどこかに身を寄せているに違いない。

 病院にも行ってみた。けがで入院し、記憶を失って名前を言えないのではないか。

生き延びた 同僚が書いた申述書

 2カ月ほどたち、気が進まな…

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この記事を書いた人
石橋英昭
編集委員|仙台駐在
専門・関心分野
東日本大震災、在日外国人、戦争の記憶
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    田中知之
    (音楽プロデューサー・選曲家)
    2025年3月11日14時46分 投稿
    【提案】

    今年も3月11日がやってきた。さほど被害らしい被害など受けていない私ですら沈鬱な気持ちになる。ホントに月並みなコメントしかできないのがもどかしいが、いまだご家族が行方不明のままで、今年もこの日を迎えられる方々のお気持ち察すると、ホントにいた

    …続きを読む
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