なぜ関税強化なのか トランプ政権ブレーンが語る「改革保守」の真意

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聞き手・池田伸壹
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 関税強化に突き進む米トランプ政権。それを進言した政権ブレーンの一人として注目を集めるのが、米保守派論客でエコノミストのオレン・キャスさんだ。政権幹部や一連の政策に影響を与えながら、自身は政権には入らず、むしろ「重要なのはトランプ後」だとまで言う。その意味とは。真の狙いは、どこにあるのか。

 キャス氏とは何者なのか。米国保守の歴史の中で、その思想と特徴はどのように位置づけられるのか。ジャーナリストで思想史研究者の会田弘継さんが、共和党民主党の状況にも触れながら解説するインタビューも併載しています。

 ――矢継ぎ早の関税政策などはトランプ大統領個人の思いつきではなく、あなた方は2017~21年の第1次政権の時期からこうした政策を練り、進言していたそうですね。

 「その通りです。それが米国にとって唯一の解決策だと考えたからです。経済学者らは当時、米国経済は過去にないほど素晴らしい状況だと言っていましたが、私たちは賛成できませんでした。実際は01年の中国のWTO(世界貿易機関)加盟で、米国の産業基盤は(中国の輸出増などにより)加速度的に弱体化し、限界に達していました」

 「それに伴い、私たちの社会も弱体化していました。『絶望死』という現象が典型的です。特に中年の低学歴の白人の間で、薬物やアルコール依存、自殺が増え、平均寿命にまで影響を与える事態になりました。グローバル化の下、米国は若者を海外での戦争に送り、失業と絶望を輸入し、大切な仕事を海外に送ってしまったのです。1980年代の保守の発想は『市場経済自由貿易』でしたが、いずれも、こうした状況を解決するには有効ではありません。だから関税なのです」

 ――しかし関税は、米国へ輸出する国だけでなく、物価の上昇などで米国民も苦しめ、誰も幸せにしないのではないでしょうか。

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 「全く同意しません。短期的…

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    三牧聖子
    (同志社大学大学院教授=米国政治外交)
    2025年4月1日18時55分 投稿
    【視点】

    トランプ関税は、世界経済のみならず、米国経済や庶民の生活にも大きな痛みを与えるのに、なぜトランプはここまで固執するのか、庶民の痛みを顧みないひどい政治家だーそう思っている私のような人をはじめ、ぜひ広く読まれてほしい。トランプの関税政策の狙い

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    辻田真佐憲
    (評論家・近現代史研究者)
    2025年4月1日18時59分 投稿
    【視点】

    家族やコミュニティといった中間集団は国家にとって不可欠な基盤だが、経済のグローバル化はそれらを大きく損なった。だからこそ、そうした中間集団の再生のために、関税などの手段を積極的に活用すべきだ――これが本インタビューで示されている立場です。

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