笑いが拍手がサイレンが「見える」 共創する文字起こしアプリの未来

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編集委員・伊藤裕香子
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アナザーノート 伊藤裕香子編集委員

 「難聴者独特の私の声が正しく文字になっています。自分の声が聞こえるような、不思議な感覚です」

 2歳で聴力を失った岐阜県岐南町加藤ゆかりさん(61)がかみしめるように発する言葉を、会場前方のスクリーンは滑らかに映し出した。手元のiPhoneに「私専用のエンジン」が入っている、という。

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 「専用エンジン」とは、加藤さんの話し方の癖やよく使う単語を学習した、音声認識ソフトの新しい機能のこと。

 「アプリを通して世界の人とわかり合える日が待ち遠しい。『聞こえる』ことはそれだけで終わらない、聞こえの向こうにある世界、さらには自分の選択肢が広がるということです」

 15分のあいさつはスクリーンの文字が支えとなり、しっかりと聴衆に届いた。

 1月25日、岐阜市で開かれた加藤さんが代表を務めるNPO法人「なせばなる」の講演会。主催者のあいさつは、総ダウンロード数が100万を超えた音声認識アプリシリーズ「YYSystem(ワイワイシステム)」の新機能のお披露目になった。

 YYシリーズはマイクロソフトが持つAI音声認識の基礎技術をもとに、トヨタグループの自動車部品大手アイシンが開発した。40人あまりの聴衆に、日本マイクロソフトの野嵜(のざき)弘倫最高技術責任者(CTO)の姿が見える。

 閉会後、野嵜さんは認識精度の高さを「びっくり」と表現した。新機能は技術開発を終えた段階で、一般に使えるのはもう少し先。しかし続く未来を「実用できるレベルと直感しました。聴覚障害の方も人前で話すことが当たり前になる時代が来ると思います」と語った。

「咳も認識」会話弾んで大笑い

 YYシリーズを私が初めて知…

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この記事を書いた人
伊藤裕香子
論説副主幹
専門・関心分野
税財政、くらしと消費、地方経済