各地でPFAS指針値超 浄水器設置費補助や血液検査費助成も

熊谷姿慧 北上田剛
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 健康への影響が懸念される有機フッ素化合物(総称PFASピーファス))が県内各地で検出されている。中には飲用水への影響がある地域もあり、県や自治体は原因の調査や、健康被害防止への対応を急ぐ。

 国内では河川や地下水などについて、PFASのうち有害性が指摘されているPFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)の合計で1リットルあたり50ナノグラムを「暫定指針値」として設定。県内では昨年以降、柏、白井、鎌ケ谷、市原、銚子、印西の各市と芝山町で暫定指針値を超える値が検出された。

 柏、鎌ケ谷、市原の各市と芝山町では飲用に使われる井戸から指針値を超える値が検出されている。

 調査で汚染が次々と確認されたのが、柏市と白井市の境を流れる水路「金山落(かなやまおとし)」とその支流だ。鎌ケ谷市軽井沢地区では今年8月の調査で、指針値の最大840倍の値が検出された井戸もあった。

 一方、市原市の平蔵川周辺では、7~8月の調査で井戸43カ所中4カ所で超過。最大で220倍の1リットルあたり1万1千ナノグラムを検出した。芝山町の小池地区南部でも、10月の調査で、飲用井戸10カ所中5カ所で指針値を超過していた。

 結果を受け、各自治体は対応に追われている。柏市、芝山町などでは指針値を超えた井戸を飲用に使用している住民に対し、浄水器の設置費用の一部を補助するなどしている。さらに鎌ケ谷市は、指針値を超えた井戸水を飲用していた人で、希望する住民には血液検査にかかる費用を助成するという。

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 各自治体が調査を進めているが、汚染源はまだ明らかになっていない。

 金山落では、二つの物質が最も多く検出された最上流地点の周辺の事業所を県などが調査したが、これらの物質を扱っている事業所はなかった。

 その調査の一環で、海上自衛隊下総航空基地にも7月に立ち入り調査を実施。基地では2021年度までPFOSを含む泡消火薬剤を保管していたが、現在は処分を終え、使用や保管はしていないという。ただ、基地側からは「基地の排水溝は、(基地の外の)北東側の水路とつながっている」との説明もあった。

 県などは改めて、基地内の水路の系統調査と、水質測定を依頼。基地側から調査を行うとの回答が今年10月中にあったという。県などは基地の調査結果を待ちながら原因特定を進める予定だ。県の担当者は「各地で汚染の原因は違うだろうし、現時点では何が原因か全くわからない」と頭を悩ませている。

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 下総航空基地に近い鎌ケ谷市の軽井沢地区。古い集落に新しい住宅も混在する一帯では、これまでに214カ所の井戸で調査結果が出ており、うち70カ所で指針値を超過する値が検出された。

 「早く原因を突き止めてもらわないと安心はできない」。同地区に住む無職の女性(70)はこう話す。自宅は水道を使っておらず、井戸水で生活する。6月ごろの調査では指針値以下だったが、不安は残る。

 調査結果が出るまでの1カ月ほどは、近くの入浴施設で水をくんだり、知人宅から水をもらったりして暮らした。「まさかこんなことになるとは思っていなかった」と表情を曇らせる。「この辺りはあちこちで指針値を超えている。不安だけど、もうなるようにしかならない」

 市によると、同地区の上水道普及率は二十数%。芝田裕美市長は11月27日の会見で「上水道の敷設を進めるとともに、一日も早く原因を突き止めて住民の不安解消に努めたい」と話した。

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