野宿の妊婦も支援されず 難民条約加入40年超、支える法律なき日本

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定塚遼
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現場へ! ホームレス難民(2)

 妊娠中の体に、深夜、冷たい雨が吹き付ける。寒くて眠れない。夫がゴミ箱から拾ってきてくれた食べ物のかけらで、栄養をとる。政治的弾圧から逃れて、アフリカから今秋日本に来た20代の難民申請者サラさん(仮名)は、東京で路上生活を経験した。

 日本は1981年から難民条約に加入しており、危険を感じて国を逃れた人々を保護する義務がある。だが、生活支援のための法整備は、今に至るまでなされていない。

 根拠法はないものの、83年以降、外務省の予算から「保護費」という申請者への支援金を拠出している。これを元に、政府の委託を受けた公益財団法人・アジア福祉教育財団の中にある「難民事業本部」という組織が支援を行う。支給は原則4カ月間のみで、住居・医療費のほか、生活費として12歳以上は月約7万2千円、12歳未満は半額が支給される。だが、年間の難民申請者数と比べると、保護費の受給者数は5%程度にとどまる。

 サラさんは、来日直後の10月上旬に保護費を申請した。すぐに難民事業本部との面談がセットされた。2時間に及んだ面談で懸命に訴えた。これまでの人生と、政治運動への弾圧や、日本での路上生活、妊娠中なのに医療を受けられないつらさ……。命を守るための最低限の支援を求めた。

申請者は7倍でも保護費は2割減

 回答には約1カ月かかった…

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定塚遼
文化部|企画など
専門・関心分野
音楽など文化全般。生きづらい人を減らす取り組み
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    岩本菜々
    (NPO法人POSSE代表理事)
    2024年12月12日16時4分 投稿
    【視点】

    日本では、難民は、生活保護などの社会保障からも排除され、働く権利もなければ、移動の権利もない。あらゆる権利を奪われた状態で命を繋いでいます。 ヨーロッパや米国など、世界各地では、難民と共に暮らす街の人々が「ともにくらす隣人の権利を守る」とい

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    浅倉拓也
    (朝日新聞記者=移民問題)
    2024年12月11日19時10分 投稿
    【視点】

    難民申請者(まだ難民と認定されていない)の命は、ほぼ民間のNGOによって支えられ、それを支えているのは個人の善意というのが実情です。欧州各国の受け入れが厳しくなってきている影響も日本に及んでいると考えられます。アフリカなどからまったく身寄り

    …続きを読む