大谷翔平、顔をゆがめてフルスイング 「打撃妨害」で好機広げ世界一

大谷翔平特集

ニューヨーク=安藤仙一朗

 (米時間30日、大リーグ・ワールドシリーズ第5戦 ロサンゼルス・ドジャース7―6ニューヨーク・ヤンキース=ドジャース4勝1敗で4年ぶり8度目のシリーズ制覇)

 第2戦で負傷した左肩は万全ではない。バットを振ったとき、左手を離して顔をゆがめた打席もある。痛みをこらえながらも、ドジャース・大谷翔平の力強いスイングは鈍らなかった。

 八回の5打席目だった。ラックスの犠飛で1点差を追いつき、なお1死一、三塁。ヤンキースのウィーバーの初球をフルスイング。手元まで引きつけたからか、相手捕手のミットをたたいた。打撃妨害となって塁を埋めると、ベッツが決勝犠飛を中堅へ高々と打ち上げた。

 「ずっと出たい、プレーしたいなと思った場所」と憧れていた大舞台は、第2戦で暗転した。

 七回に二盗を試みた際に左肩を痛めた。「亜脱臼」と、ロバーツ監督は説明した。

 大谷は第3戦を終えた後、「試合の中でもう痛い、痛くないってあんまり考えていない。もう痛くないって気持ちでやっています」。言い回しは穏やかながら、気丈にそう語っていた。

 今シリーズは5試合を戦って、2安打だけ。本塁打、打点はなかった。それでも、最後まで全力でチームプレーを貫いた先に、初のワールドチャンピオンが待っていた。

 最大5点差を追いつき、最後に試合をひっくり返したチームに4年ぶりの歓喜の瞬間が訪れると、大谷は喜び合うチームメートが待つマウンド付近へ。こんなひとときを夢見て、今季からドジャースに移籍してきた。

 「新しいチームにきて、最高の終わり方ができて、最高の1年だったと思います」。テレビ中継のインタビューでそう語った声は、いつもよりトーンが高く、晴れやかな笑みだった。(ニューヨーク=安藤仙一朗)…

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    平尾剛
    (スポーツ教育学者・元ラグビー日本代表)
    2024年10月31日15時52分 投稿
    【視点】

    ケガを押してプレイした大谷翔平選手には最大限の敬意を払っている。優勝が決まるここ一番での強行出場を決めた胸の内は、元アスリートとして痛いほどよくわかる。チームの士気が下がるくらいなら、たとえこの身体がどうなってもいい。大半のアスリートは、おそらくこう考えるだろう。大谷選手のメンタルタフネスには、頭が下がるばかりである。 それでもひとつ、どうしても言っておきたいことがある。メディアはこれを美談として大々的に報じるのはやめてほしい。選手生命を削りかねない特例として控えめにお願いしたい。 さらには、部活動などで指導する方々には、これを模倣するような指導をしないでほしい。プロ選手が全米一位を決める大舞台でやむなく下した決断を、心身ともに成長途上の子供たちが真似していいはずがないからだ。 プロスポーツの論理を、子供のスポーツに取り込んではいけない。子供たちの将来を考えれば、ケガでも無理して試合に出ようとするのを止めるのが、指導者の役割のはずだ。おそらく大谷選手自身も「良い子は真似をしないよう」と思っているはずである。 ケガは、無理をすれば競技能力を損ない、選手生命を短くする。老婆心ながら声を強くして言っておきたい。

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    中小路徹
    (朝日新聞編集委員=スポーツと社会)
    2024年10月31日16時15分 投稿
    【視点】

     平尾さんも書かれていますが、追随します。  まず、どんな状況に陥っても、最大限のプレーをしてきた大谷選手に敬意を表したいです。  一方で、これはトップ・オブ・トップの世界での、最後の勝負だからこそ、無理を押しての出場でした。特に裾野の子ど

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