本当はずっと昔からの流行だった 「昭和レトロ」の現場を歩く

有料記事

高橋美佐子

 「昭和レトロ」が流行しています。スマホの画面を指でなぞれば、大事な人とやりとりができ、好きなものが買えて、見たい映像を見られる――。そんな便利な時代だからこそ、手間がかかるアナログな世界に魅了される人は多いともいわれます。とはいえ、Z世代と呼ばれる若者たちが「見たことないけど、懐かしい!」とはしゃぐ姿に、かすかな違和感を抱く中高年もいるはず。私たちはなぜ〝あのころ〟に出会うと心を揺さぶられるのか。現場を歩きながら考えました。

 埼玉県東松山市の住宅街にたたずむ、築52年の木造2階建て一軒家。玄関を入った途端、記者(55)は頭がくらくらした。

 げた箱の上には頭が大きく足の細い女の子の「ポーズ人形」が飾られ、そばにダイヤル式黒電話。壁からシカの剝製(はくせい)が見下ろす洋間は、1962(昭和37)年から販売される国産ソファが鎮座する。和室は窓に障子を重ね、脚付きテレビ、サイドボードの中には猫の置物や南の島の少女を思わせる「ソフトビニール人形」も。台所の洗剤は「ママレモン」、床材が「Pタイル」、冷蔵庫ドアの緑色を目にした瞬間、記者は10代のころに住んだ実家を思い出し、泣きそうになった。

 「タイムスリップ感、あるでしょ」

 家主の平山雄(ゆう)さん(…

この記事は有料記事です。残り3904文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません