告発した元局長死亡に動揺広がる 知事の疑惑、解明始まったさなかに

谷辺晃子 石田貴子 大久保直樹 杉山あかり

 斎藤元彦・兵庫県知事の疑惑を告発する文書を出した元西播磨県民局長(60)が死亡したことが、明らかになった。関係者によると、自殺の可能性がある。

 疑惑の真偽をただす百条委員会が動き始めたさなかの事態に、県庁内では動揺が広がった。問題の真相は究明されるのか。

知事の責任は

 斎藤知事は8日夕方、県庁で取材に応じ、「大変ショックを受けて混乱しています。心からおくやみを申し上げたい。そして県民のみなさんに改めておわび申し上げる」と話し、深く頭を下げた。

 斎藤知事が元局長の死亡を知ったのは7日午後10時ごろ。片山安孝副知事からの連絡だったという。「百条委員会に19日に証人として出ることに心理的負担はあったと推測する。このタイミングでお亡くなりになったことは心から残念」と話した。

 元局長について「前向きで熱心な方。現場へ行って人間関係を作りながら熱心にお仕事をされていた」と振り返った。

 遺族に対しては「弔意をどのようなかたちでお伝えできるか、先方のご意向もあると思う。そこも踏まえて対応したい」と述べた。

 この日、斎藤知事は公務で岡山県を訪れていた。予定を変更しなかったことについて「突然のキャンセルはできず、厳しい心理状況ではありましたが対応させていただいた」とした。

 会見では、斎藤知事の責任を問う質問も相次いだ。「いろんなご批判ご指摘があることは承知している。真摯(しんし)に受け止めたい」としたものの、「気持ちの整理が大変難しい状況だが、県政をどう立て直していくか、もう一度自分自身を振り返りながら職員のみなさんと考えたい」とした。

 自身の進退について問われると、「これからもいい県庁、職場作りに全力で取り組むのが最大の責務」と強調した。

取材に応じた百条委・奥谷委員長

 告発内容の真偽をただす調査特別委員会(百条委員会)の委員長をつとめる奥谷謙一県議は8日午後、報道陣の取材に応じ、元局長の死亡について「本当に痛恨の極み。大変残念に思います」と語った。

 奥谷委員長は、元局長とは顔見知りで、百条委の設置が決まってから元局長との接触は避けていたという。しかし、百条委設置が議決された当日、元局長から「ご尽力感謝します」とのメールが届いたという。

 最後に連絡があったのは「先週あたま」。百条委の調査の進め方について「個人のプライバシーに配慮した進め方をしてほしい」という内容のメールだったという。

 奥谷委員長は「百条委が立ち上がってから、本人に対して大きな重圧がかかっていたことはあるかもしれない。把握していなかったことは私自身、反省点だと思っている」と述べ、「非常に優しく、職員からの人望も厚い方だった」と語った。

7日午前、本人からメール

 一方、議会事務局は、死亡当日の7日午前10時19分に元局長から議会事務局にメールがあったことを明らかにした。

 議会事務局は6月28日、元局長に証人としての出頭請求を簡易書留で送付。同29日に受け取られたことを確認した。7月5日に事務局から関連文書の提出を電話で依頼したところ、「分かりました」という返事があり、7日午前10時19分にメールを受信した。3月中旬の告発文書と、4月に報道機関へ送られた文書の計2通が添付されていたという。

 元局長は7月19日の3回目の百条委に証人として出頭する予定で議会事務局と調整していた。事務局は「出頭して頂けるという前提で受け止めていた」という。

 奥谷委員長は今後の百条委について、「文書の真偽を確かめていくことが百条委員会の目的。元局長の証言が重要だったのは間違いないが、第三者、物証等でも立証できる可能性はある。今後も最大限の努力をして真相を解明したい」と述べ、今後も開催する意向を示した。

 一方、自民県議の一人は「恐れていた事態になった。職員にこれ以上犠牲が出ないように、百条委の進め方は一度立ち止まって考えるべきだ」と語った。

 県職員にアンケートするなど事実の解明に努めてきた無所属の丸尾牧県議は「非常に衝撃だし、残念というのが率直な思いだ」と述べた。(谷辺晃子、石田貴子、大久保直樹、杉山あかり)

告発文書をめぐる動き

3月中旬 元局長が「知事から職員へのパワーハラスメント」などと指摘する告発文書を県議らに送る

27日 元局長の退職を取り消す人事が公表される

5月7日 県が元局長を停職3カ月とする懲戒処分を発表

21日 県議会の要請を受け、斎藤元彦知事が第三者機関による調査を表明

6月13日 県議会で百条委の設置が決まる

14日 百条委の初会合。委員長に第1会派の自民から奥谷謙一議員を選任

20日 知事が会見で、告発内容について初めて自身の見解を述べ、疑惑を否定

27日 2回目の会合。7月19日に予定された3回目に、元局長を証人として呼ぶことを決定

7月7日 元局長が死亡

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【動画】兵庫の元西播磨県民局長が死亡 県議会・百条委委員長が会見=島脇健史撮影

この記事を書いた人
石田貴子
阪神支局
専門・関心分野
子育て、教育、働き方、平和
大久保直樹
神戸総局|東播地区担当
専門・関心分野
地方自治・過疎問題・原発・史跡などの文化財